愛こそは





「青春は花にして愛こそはその実なれ。
 心ゆくまで実らせて
 摘み取るものにこそ、幸あれ」

 昨夜もやっぱり、その、かなりハードでさ、オレは、ことんと寝ちまったらしい。ま、いつものことだけど。
 どれくらい寝てたんだか。半分くらい意識が目覚めかけたところで、あいつが何か口ずさんでるのに気づいた。で、なんだ〜と思ってると、冒頭の詩だったってわけだ。
「なんだよ、それはっ」
 思わず食って掛かって、全身のだるさに、シーツになついちまったのは、まぁご愛嬌か。
「モンテ・クリスト伯の中の一節だ。誰だかの詩だったはずだがな」
 鼻歌でも歌いそうな機嫌のよさに、
「ふん。実らせもせずに千切ったヤツのくせに」
 なんだか、腹が立ったから、そう言って、背中を向けた。ら、
「だから、こうして、枯らさないように、大切にしている。だろう?」
と、後ろから顔を覗き込んできて、にやりと笑いやがった。
「でも、結局、千切ったことに変わりはないよな。千切られた花は、何も実らせないで枯れるのが運命だし」
 実る実なんて端からないんだぞ――と示唆してやる。
 だいたいが、最初が強姦だったんだから、最低最悪だし。それでこうしてずるずると続いてるのは、こいつがなんつーか、ねちっこい性格だったっていうのと、オレが押しに弱い性格だっていうただそれだけのせいだ。
「もとより、花はいずれ、枯れるものだ。が、」
 そこで、意味ありげに言葉を切ると、
「しかし、最近では枯らさない処置というのもあるらしいからな」
 にやりと笑って、オレの顎を持ち上げやがった。
「あのときに無理にでも千切っておかなければ、お前を手に入れることはできなかったろうからな」
 そう言うなり、オレの体を反転させて、キスしてきたんだ。
 オレが反射的に肩に手を突っ張ると、顔を上げて、不適な笑いを口元に刻みやがった。それに、ゾクンと、震えが走る。
「朝まで、まだ間がある」
 そう言って、オレの首筋に、喰らいつく。
 くそっ、オヤジのくせになんだってこうも絶倫なんだ。
 オレの非難は、ただのあえぎに変わっていった。

おわり

start 7:17 2006/12/01
up 7:46 2006/12/01
◇ いいわけ その他 ◇

 とある夜の一幕ってことですね。
 いえ、頭の中に冒頭の詩がぐるぐるしてて、思いついちゃったのでした。
 なんのかんのとすっかり出来上がっちゃったふたりという感じで。長くするとたぶんまた、不幸体質がなにやら招きそうなので、この辺できるのが適当かとvv
 少しでも楽しんでいただけるとうれしいです。

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