バレンタイン?



「いい天気だ」
 一年で一番寒さの厳しい時期だというのに、小春日和とでもいうのだろうか、ガラス越しに感じる陽射しは、とてもあたたかい。
 赤い実をつけた木の枝に、明るい緑の鳥がとまっては、実をついばんでいる。
 なんか、家の中にいるのが、勿体無い。
 出かける予定にしておいて、ラッキーってなもんだ。どこか目当てがあるわけじゃないが、こんな天気の日くらい、気分転換をしたって罰は当たらないだろ。
 槙々(しんしん)は、塾―学校だな―に出かけた。昼までは帰ってこない。
 昇紘も、そろそろ、出かけるだろう。って言っても、あっちっかわの時間に直してみれば、だいたい十時くらいだ。もうとっくに、町は動き出してる時間帯だったりするんだが。
 朝飯を食ってる、ヤツを眺める。
 ここは、オレたち、家族専用の、食堂だ。
 昇紘は、いつもどおりの、苦虫を噛み潰したような、クソ面白くもなさそうな顔をして、レンゲで粥を口元に運んでいる。
 今更だが、これが、オレの、旦那かよ……と思えば、なんか、こう、釈然としない気になってくる。
 なんでなんだか。
 やっぱ、オレが男で、昇紘も男っていうのが、ネックなんだろう。一緒になって、かなりになるっていうのにな。
 しかも、オレと昇紘の子供までできてるっていうのに――だ。
 この世界の生きものは、それこそ、みんな、木の枝になった卵から生まれるんだって聞いてたのに、槙々は、オレの腹から生まれた。
 燦玉に、里木の枝に帯を結んだそこに、天帝が子供の入ってる卵を実らせてくれるんだって、そう聞いてたって言うのに。たまにのぞきに行くと、なんとなく、枝の先が膨らんでるような気がして、奇妙な気分になってたっていうのに、ある日、突然、それが消えたんだ。
 まぁ、あれは、小さな蝕(しょく)が起きた翌日だったから、オレの卵以外にも、数個、なくなってた。蝕にながされたって話だったけど……。
 変な気分だよな。あれは。
 淋しいし、がっかりしたって感じは当然あった。悲しかったさ。けど、まだ、小さな、レモンくらいにもなってない大きさだったから、オレは、まぁ、あまり、実感なかったんだろう。
 ぼんやりしてた。
 せっかく、手間暇かけて、刺繍をしたのはなんだったんだとか、また、刺繍しろとか言われるんだろうかとか、ぐるぐる頭の中に回ってた。
 そうして、オレの体調が、変になったんだ。
 酸っぱいものが欲しくなって、吐き気が頻繁にして、貧血まで起きる始末だった。物は食えなくなるしな。仙の端くれだっていうのに、どうしたんだろう。――そんな不安は、腹がせり出してきて、解決した。逆に、また、別の不安や恐怖がオレに襲いかかってきたけどな。
 なにがどうなってるんだか、あのときのオレの気持ち、誰か、判ってくれるヤツいるんだろうか。すごいパニックを起こして、オレは、半狂乱だったんだ。だってな、もとの世界でだって、男が腹にこどもを孕むなんて、冗談とか漫画とかの世界の空想くらいでしかなかったよな。なのに、よりによって、血の繋がりとか言うことばから最もかけ離れてる親子関係の世界で、オレは、こどもを生む羽目になったのだ。
 蝕で流された卵は、運がよければ虚海(きょかい)を渡って、あっちっかわの妊婦の胎内に着床するらしい。それが、どこを同間違ったのか、オレの腹に、入り込んだってことらしい。
 そりゃあな、周囲だって、焦っただろう。ああいうやつだから、顔には出してなかったが、昇紘も、オレの次に慌ててたみたいだ。
 けど、オレが、一番だ。これは、胸を張って、言える。
 仙になって、男と結婚して、出産だぞ………。
 周囲がやかましかった。
 そりゃ、異変だとか、天変地異の前ぶれだとか、妖魔の仕業だとか、天綱にそむいた罰だとか、昇紘より上の位のお偉いさんたちは、ひとごとだと思って好き勝手に騒いでくれた。でもって、この事実を世間から隠したがったから、この屋敷の中でも、知ってるのは、オレと昇紘を含めて、まぁ、五人いない。
 オレの肝さえまだ座ってなくって、不安で怖くてならなかったってーのに、周囲が、それだ。
 結局、闇から闇へと殺されそうになったオレの腹の子は、仁獣だという、この世界の神獣と、その対になるのだというこの国の王(女王だ)のひとことで、助けられた。
 どっからどうやって生んだかなんていうのは、生々しいし、痛いから、パスすっけどな。ともかく、そんないきさつを越えて、生まれた子だから、可愛いっちゃ可愛いが、なんかこう、変な気分になっちまうのも、事実だったりする。
 一応、オレは――オレも、昇紘も、仙だ。が、仙の子供だからって、槙々は、仙じゃない。ふつーに年を取る。今は、六つだったか。所謂、生意気盛りって年頃だ。仙になるかどうかは、あれしだいなんだろう。昇紘みたいに、勉強して、それで、官吏になるか、それとも、オレみたいに、仙と結婚するか。もしくは、端から仙として生まれてきていたか――これは、ありえなさそうだが。まぁ、これくらいだろうか。この世界には、オレにはいまだ、よくわからない仕組みがある。オレが特別馬鹿だってわけじゃないと、思いたいがな。
「どうした」
 低い声に、オレは、外を見ていた視線を昇紘に向けた。
 昇紘は、果物の皮を剥いているところだった。
「また、熱でもでたのか。さっきから、少しも減っていないが」
 顎でしゃくるように示されて、オレは、自分が、粥を食べかけのまま、ぼんやりとしていたことに気づいた。
「熱なんかでてないって」
 病老死苦から解放されてる仙のくせに、なんで熱がでるんだか。まぁ、理由としたら、あれ――なんだろうけどな。口にはしない。
「なら、どうした」
 そんな、突っ込まれても困る。
 取り留めのないことを考えていただけだっていうのに。
 こいつは、オレに関しては、やけに過干渉というか心配性というか、過保護だ。
 鬱陶しいくらいにな。
 やっぱり、馴れ初めとかそのあたりが、こいつの中で、なにか、トラウマにでもなってるんだろうか。
 まぁ、オレとしても、あのあたりのことは、思い出したくない記憶だ。
 それとも、槙々を生んだ時のことだろうか。男のオレが、産む羽目になったわけだ。滅茶苦茶もいいところだが………。最悪、槙々が生まれなくてもかまわないと、昇紘は本気で考えてたらしい。ともかく、オレが最優先だったって、後になって、孫医師に聞かされた。これには、オレは、どういう顔をすればいいのか、正直わからなかった。
「うわっ」
 もっかい、ぼんやりとしてしまってたオレは、額に、掌をあてられて、びっくりしちまった。
 やばいと、思ったが、後の祭ってヤツだ。
 いつの間に席を立ったのか、目の前に、昇紘が立っていた。
 憮然とした表情の昇紘が、オレを見下ろしてた。鋼色した目が、少し眇められてる。
「少し、高いな」
 いつもより低めのトーンの声で、ゆったりと話す時、こいつは、気分を害している場合が多い。
 なんか、いやな予感がしたんだ。
 案の定、
「今日の外出は、取りやめたほうがいいな」
と、きたもんだ。
「ちょっとまてっ」
「なんだ」
「なんなんだよ、それって」
「妻の体調を心配して、どこが悪い」
「妻って言うな!」
 恥ずかしいんだって。
 馴れない。
 実際、そのとおりだとしたって、オレは、あくまで男なんだし。
「だいたい、なんで、仙が病気になんだよ」
「病気はともかく、体調を崩すことが皆無なわけではないぞ。おまえの場合、仙になる前には、よく倒れていたしな。それに、槙々の時の例もある」
「そ、れは、おまえのせいだって……」
「だから、心配している。昨夜は少しばかり、無理をさせたかもしれないしな」
「…………」
 昇紘の意味深な台詞に、狂態を思い出して、オレの顔が赤くなる。
 むっつり助平って言うのは、こういうやつのことを言うんだ! しれっとしたツラして、朝っぱらからなんつーことを!
 って、ちょっとまて、オレ。冷静になれ。会話の趣旨がずれてるぞ。
「とにかく、オレは今日は、出かけるからな」
 あんまり勝手ばかり言ってると、家出してやる。
 マジで、しばらくこいつの顔、見たくないかも。
 むか〜しのテレビコマーシャルによく流れてたじゃないか。まだガキだったが、インパクト強かったらしくて、よく覚えてる。
 ほら、あれだ。
『亭主元気で留守がいい』
 あれ、よくわかる。
 できれば、わかりたくなんか、なかったんだけどな。
 亭主が留守じゃなければ、こっちが、プチ家出だ。
 なんか、ヤンママんでもなった気分で、やさぐれてしまいそうだった。
  「駄目だ」
 立ったまま、オレを見下ろしてくる鋼色の瞳が、やけに、真剣だったけど、オレは、退く気なんかなかった。
「やだ」
 オレは、昇紘の目を、睨み返した。
「燦玉」
 なんで、そこで、燦玉なんだよっ。
  「今日の奥さまの外出は、取り止めだ。いいな」
 食堂の隅に控えていた燦玉が、近づいてくる。
「横暴だぞ」
「おまえの体調を心配している」
「オレのからだだ。オレが、大丈夫だって言ってる」
「それでもだ」
 おろおろと、燦玉が、オレと昇紘を見比べているのが、目の端に映る。
「イヤだっ!」
 まるで駄々っ子みたいに、オレは、食堂から駆け出した。
 昇紘の声が、まだ追って来ていたが、オレは、振り返らなかった。



 勢いに任せて飛び出した町は、やけににぎやかだった。
 寒さにもめげず、華やいで見えるのは、女たちの雰囲気のせいだろう。
 町にあふれている女たちは、パワフルで、楽しそうで、それでいて、殺気立ってるように見えた。
 こんなの、大分前に見たことあるよーな。
 つらつらと考えて、はたと、思い出した。
「あ! バーゲンセール」
 あっちにいたころは、よくおふくろの荷物持ちに付き合わされたものだった。
 懐かしさにしみじみと耽っていると、
「浅野っ」
 聞き覚えのある声が、聞こえてきた。
 振り返ると、頬を染めて走ってきているのは、
「明珊(めいさん)」
 たしか、六つになったばかりだったはずの、可愛らしい少女だ。
 いつの間にか、馴染んだ道を歩いていたらしい。
「浅野だ〜。すっごい久しぶり。ね、ねっ、今日は来てくれるんでしょ」
 オレの上着の袖を引っ張って、明珊は家のほうへと連れて行こうとする。
「おかぁさんも、浅野に会いたがってるよ」
 どうしてるかなって、よく言ってるもん。
 久しぶりの外出とはいえ、目的は別段ない。ただ、屋敷にいると、息が詰まる。だから、たまには息抜きをしたくなる。それだけのことだ。それに、今日は、ヤツとのやり取りで、くさくさしてる。ささくれ立ってる神経を、どうにかして、宥めたかった。いざとなったら、まじで、家出でもいいかもしれないなんて、後先考えずに、やっちまいそうだ。そんなことしたら、ぜったい、次からの外出を禁止されるに決まってんだ。誰に? って、もちろん、ヤツ、昇紘にだ。
 明珊に引っ張られるままに、オレは、懐かしい、明蘭の店に足を踏み入れた。
 途端、鼻をくすぐったのは、甘い香だった。
 そうして、女たちのさんざめきだ。
 昔、オレが、帳簿付けをしていた土間いっぱいに、女たちが犇めいている。
 思わず、くるりとユーターンして、土間から出て行きたいくらいの迫力だ。しかし、
「おかーさん、浅野だよ」
と、袖を引っ張る珊玉を振り払うわけにもいかない。
 女たちを掻き分けて、奥へと進むと、そこはショウケースみたいな台が設けられていた。そこに並べられているものを見て、オレは、なんとなく、直感していた。
 ケースの向こう背中を向けていた女性が、くるりと振り向いた。
「いらっしゃいませ」
 すっかり大人の女性になった明蘭が、オレを見て、目を丸くした。
 オレは、明蘭に拾われた頃からほとんど成長していないって言うのに、オレよりも年下だった明蘭は、とてもきれいに、眩しくなっている。なんだか、おいてかれたみたいで、少し淋しい。
「いったいこの騒ぎは?」
 つい、戦場のように忙しいという状況を忘れて、オレは間が抜けた質問をしてしまっていた。
 手伝いらしい少女に、なにやら言いつけて、明蘭が、オレを手招いた。
 帳場の裏手の部屋に通されて、オレは、ホッと、からだの芯から、しこりが溶けてくのを感じてた。聞き上手って言うのか、オレってそんなにしゃべくるほうじゃないけど、明蘭のふんわりした雰囲気に、気が弛んでしまったらしい。にこにこと、何を言っても反論せずに、相槌を打って同意してくれるのは、助かる。こういうのって、たしか、臨床心理とか精神科とかの医者の、手というか、なんといえばいいんだろ――手段だったりするんだよな。オレにとっては、愚痴らせてくれる、ありがたい存在だったりする。ひとしきり、今朝の昇紘とのやり取りを、喋っちまってた。
 女々しいなと、自分でも思うけど、つい……吐き出すところがないからなぁ。
 自分のことばっかり話しちまってたってことに気づいて、
「まさかと思うんだけど」
と、オレは、頭をかきながら、話を変えた。
 気になってたってこともある。
 出された茶菓子といい、土間に充満していた匂いといい、
「そう」
 明珊が、オレの親指の先くらいの茶色い菓子を口に放り込む。
「ばれんたいんでーって言うんですって」
 明蘭が、にっこりと、口を開いた。

 十年くらい前か、まるで歴史は繰り返すって感じで、オレは、オレが明蘭に拾われた浜辺で、ひとりの海客を助けた。
 それが、明蘭の夫で、明珊の、父親だ。
 オレが男を拾ったなんていったら、昇紘がどんな焼き餅を焼くかしれなかったので、オレは、明蘭に海客を預けたのだ。
 元気になった海客は、あっちで、パティスリーをしていたらしい。言うまでもないが、洋菓子屋だ。
 で、まぁ、しばらくしてから、こっちっかわの菓子屋で働くことが決まったらしかった。
 オレが知ってるのは、あとは、明蘭と海客とが結婚して、珊玉が生まれたってくらいだ。
「商売人なんだな〜」
「思ったより評判になっちゃって、猫の手も借りたいくらいなの」
 どうも、本当の、ちょこれいと――っていうお菓子とは、ちょっと違うらしいんだけどね。
「そんなことない。久しぶりに、美味かったよ」
「そう。浅野に言われたら、夫も喜ぶと思う。もとのちょこれいとを知ってるのって、この辺じゃ、浅野くらいだものね」
 すっかり、妻の顔をして、明蘭が、微笑んだ。
「忙しいのに、長居しちまって、悪い」
 帰ろうと腰を上げると、明蘭が、包みをひとつ差し出した。
 明蘭と包みとを交互に見比べると、
「浅野からだって言って、郷長さまに差し上げるのよ」
 仲直りしないと。そんな風ににっこりと微笑まれると、受け取るしかないじゃないか。
「ありがと」
 そんなオレの袖を、明珊が、引っ張る。
「なんだ、明珊」
 しゃがみこんだオレに、まるで明蘭のまねみたいに、小さな手が差し出したのは、胡桃くらいの大きさにラッピングされた包みだ。
「あのね、これ……槙々ちゃんに」
 槙々と、明珊とは、仲がいい。
「わかった。渡しとく。今度は、連れてくるからな」
「約束だよ」
「ああ」
 指切りをして、オレは、店を後にしたのだった。
 


 帰ると、燦玉が心配そうな顔をして現われた。
 いらん心配させて悪かったなとは思うけど、こっちも色々と、言い分がある。
 とりあえず、部屋に戻ったオレは、卓子の上に包みをふたつ置いて、長椅子に寝そべった。
 着替えるのも面倒だから、朝からずっと同じ服のままだ。
 ヤツが帰ってくるまでには着替えないとな、また、色々言われちまう。
 そんなことを考えながら、オレはうとうととしちまってたらしい。
 頬に冷たいものがあてられた感触に、驚いて目を覚ましたオレの前に、黒い目があった。
「おかーさま。ご気分が悪い?」
 心配そうに見つめているのは、
「槙々。塾終わったのか」
「はい」
「そっか。お帰り」
 頭をなでると、顔をしかめる。子ども扱いされるのが、厭なんだろう。
 その割には、起き上がったオレの膝に乗り上げてきた。甘えてくるよな、案外。
 このバランスが、面白いというか、可愛いというか……。
 ヤツもまだ帰ってないし、ちょっとくらいは、いいか。
 子どもの高い体温と重みとを感じながら、オレは、やっぱり、眠っちまってた。
 これは、もう、条件反射みたいなもんだよな――とか、言い訳しながら。
 んでもって、今度目が覚めると、目の前に、昇紘の不機嫌そうな顔があった。
 槙々を抱き上げて、後ろに控えてた燦玉に渡す。起こさないところをみると、このまま昼寝だな。燦玉に抱かれたまま、槙々は、部屋に戻されてく。後で、何か持ってってやろう。晩までもちゃしないよな。
   昼飯の準備はできてるよな。なんて考えるのと同時に、ああ、まだ、こいつってば朝のこと怒ってんのかって、思ったりして。オレの頭も、結構忙しい。
 しつこいヤツだ。けど、明蘭にも言われてるし、たまには、折れてやらないと、な。
「今朝のこと、ごめん」
 頭も下げておく。
 と、
「本当に、そう思ってるのか?」
 顎を掴まれた。
 食い入るように見つめられて、背中が、ざわめく。
「心配かけて、悪かったって」
 結局は、オレの体調が悪い悪くないが発端みたいなもんだしな。
  「あ、そうだ」
 昇紘の視線から逸らしたオレの目が、それを、捉えた。
 昇紘の次の動きを制するみたいに、オレは、寝椅子から立ち上がって、卓子に向かった。
 明蘭から貰った包みを取り上げて、
「これ、おまえに」
 意味が通じるんだか通じないんだか、わからないが、なんだか、やばそうな雰囲気になりそうだったので、ちょうどいい。
 受け取った昇紘が、包みを開く。
 そういや、オレが、こいつになんかやるのって、はじめてかもしれない。まぁ、オレは、金を持ってないしなぁ。あとで、明蘭になにかお返ししとかないとな。なにがいいんだろ。
「これは」
 箱を開けて、昇紘が、オレを見た。
「え〜と」
 頬を人差し指で軽く掻きながら、オレの視線が、惑う。
 なんて言えばいいんだ………。
「ばれんたいんとか言うのだったな」
 昇紘の言葉に、オレの目が大きくなった。
「町の情報は、把握している。当然だ」
「そうでした」
 そうだ。こいつは、郷長なんだもんな。
 なら、こいつを渡す意味も、当然知ってるってことなんだろうな。
「これを買うために出かけたかったのか?」
 少し、口調に、甘いものが含まれてるような気がして、背中が、ぞわりと、粟だった。
 な、なんか、嬉しそうなんですけど。
 こ、ここは、逆らわないほうがいいんだろうなぁ。
 いつもはへの字に結ばれてる昇紘の口角が、なんとなく、持ち上がってる。
 オレは、ゆっくりと、頷いてみせた。
「そうか」
 チョコをひとつ指でつまんで、昇紘が口に入れる。
 にんまりと、目尻を下げた昇紘に抱き寄せられて、そうして、オレは、チョコの甘さを、口いっぱいに味わっていたのだった。


おわり



start 10:28 2005/02/14
up 21:11 2005/02/15
あとがき
 甘めでバカップルに、仕上がったかな?
 色々と、原作設定と違うところとかありますが、それは、今更ということでお目こぼしくださると嬉しいですxx
 えと、少しでも楽しんでいただけるといいのですが。
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