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愛こそは

愛こそは




「青春は花にして愛こそはその実なれ。
 心ゆくまで実らせて
 摘み取るものにこそ、幸あれ」

 昨夜もやっぱり、その、かなりハードでさ、オレは、ことんと寝ちまったらしい。ま、いつものことだけど。
 どれくらい寝てたんだか。半分くらい意識が目覚めかけたところで、あいつが何か口ずさんでるのに気づいた。で、なんだ〜と思ってると、冒頭の詩だったってわけだ。
「なんだよ、それはっ」
 思わず食って掛かって、全身のだるさに、シーツになついちまったのは、まぁご愛嬌か。
「モンテ・クリスト伯の中の一節ですよ。知りませんか? 誰だかの詩だったはずですけどね」
 そんなん知りませんって。
 鼻歌でも歌いそうな機嫌のよさに、
「ふん。実らせもせずに千切ったヤツのくせに」
 なんだか、腹が立ったから、そう言って、背中を向けた。ら、
「だから、こうして、枯らさないように、大切にしている。違いますか?」
と、後ろから顔を覗き込んできて、ふっと笑いやがった。
 薄暗い明かりの中でも、こいつの整った顔が、よく見える。思わず見惚れそうになって、
「でも、結局、千切ったことに変わりはないよな。千切られた花は、何も実らせないで枯れるのが運命だし」
 実る実なんて端からないんだぞ――と示唆してやる。
 だいたいが、最初が強姦だったんだから、最低最悪だし。それでこうしてずるずると続いてるのは、こいつがなんつーか、見た目と違ってねちっこい性格だったっていうのと、オレが押しに弱い性格だっていうただそれだけのせいだ。
「もとより、花はいずれ、枯れるものですよ。けれど、」
 そこで、意味ありげに言葉を切ると、
「最近では枯らさない処置というのがあるそうですよ」
 にっこりと笑って、オレの顎を持ち上げやがった。
「あのときに無理にでも千切っておかなければ、君を手に入れることはできなかったでしょうからね」
 そう言うなり、オレの体を反転させて、キスしてきたんだ。
 オレが反射的に肩に手を突っ張ると、顔を上げて、不適な笑いを口元に刻みやがった。それに、ゾクンと、震えが走る。
「朝までにはまだ間がありますよ」
 そう言って、オレの首筋に、喰らいつく。
 くそっ、一見優男って感じなのに、なんだってこうも絶倫なんだ。
 オレの非難は、ただのあえぎに変わっていった。
おわり

start 7:17 2006/12/01
up 7:46 2006/12/01
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