午 睡


 ドアを開けた途端、金色の目が大きく見開かれた。
「おやおや」
 楽しげな声がかすかに空気を震わせた。
 外に向かって開かれた大きなイギリス窓から入ってくる風が、白いレースのカーテンを揺らめかせている。
 フローリングの床の上、でんと据えられた猫足のソファの上で、待ちくたびれたのか、丸くなる姿は、まるで仔猫のようで、ほほえましい。
 白いTシャツの裾がめくれて、滑らかな背中が、見えている。
 そっと近づいて、まろやかな頬にくちづけをひとつ。
 寝返りをうとうとして、ソファから落ちかける背中を支える。
 金色の目に、悪戯そうな光が宿った。
 するりとTシャツの下に手が忍び込み、手触りを楽しむように、撫でさする。
「目を覚まさなければ、食べてしまいますよ」
 背中から前へと滑らせた掌が、胸の蕾を転がした。
 クン――と、猫ならぬ犬のような喉声が金目の男の耳に届いた。
 まだ余裕のあった男のまなざしに、オスの色がにじむ。
 耳の付け根を強く吸い、所有の証を刻印する。
「やっ」
 それだけで、ことばにならない声が、こもって聞こえた。
 半ば目覚めかけたのだろう少年が、もがくように身を返そうとするのを助けて、床の上に横たえる。
 すでに熱のこもったからだは意のままにならなくなっているのだろう。
 夢とも現ともつかないまま、半ば焦れたように潤む瞳が、男を見上げていた。
「誘ったのは、君ですよ」
 言いがかりをつけるように、朱唇が笑いを刻んだ。
 

おわり



start 16:24 2008 05 18
up 16:42 2008 05 18 ◇ あとがきとかいいわけとか ◇

 どうしましょうって言うくらい、意味もオチもなんにもない話で失礼しました。
 雰囲気だけの話を書いてみたかったのですが。
 名前すら出ていないというxx
 少しでも、楽しんでいただけると、幸いなんですけど………ね。
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