運命の恋人


 青い空。
 視界をさえぎるもののない水平線が、どこまでも広がっている。
 白い石灰岩質の切り立った崖の頂上に立ち尽くして、褐色の髪の少年が、遥か眼下を眺めている。傍らに寄り添うのは、彼よりも丈の高い黒髪の男だ。男が、少年の手を握りしめた。
「はじめ。君は、この場所が、気に入っているんですね」
「ああ。高遠。なんでだろうな。空気に溶け込んでしまいそうで、不思議と安心するんだ」
 緑の水面と砕け散る白い波頭。
 見下ろしているだけで、吸い込まれそうだった。
「それは困ります。君がいなくなったりしたら、私は気が狂ってしまうでしょう」
「あんたに黙って………いなくなったりしない」
「当然でしょう。君は、私の帰る場所、君にとっても、私だけが帰る場所のはずですよね」
 きっぱりと言い切った高遠に、
「自信家だな」
 はじめが苦笑する。
「本当のことでしょう。私は、君を愛していますよ」
「オレも……」
 どちらからともなく、ふたりのくちびるが触れあった。
 海のかなたから吹きつけてくる風が、ふたりの髪を、着衣を、はためかせる。
「海風は、病みあがりのからだによくありませんよ。そろそろ家に戻りましょう」
「ああ」
 振り返れば、赤茶けた荒野の只中に、緑に包まれた、家がある。
 そこが、彼ら、はじめと高遠の、帰るべき家だった。



 それは、信じたくない光景だった。
 高遠遙一を銃弾からかばい、金田一はじめが被弾した。
 弾は、まがうことなく、はじめの心臓の位置を貫いていた。
 数え切れないほどくちづけを交わしたくちびるが、彼の名を呼ぶかのように、かすかに動いた。
 そうして、鳶色の瞳は、光を失ったのだった。
「はじめッ!」
 高遠の、魂消えるような絶叫が、その場に、こだました。
「高遠っ! どうした」
 肩を揺さぶられ、高遠は目覚めた。
「ああ、はじめ」
 そこにいたのですね―――と、自分を見下ろす恋人の頬に手を伸ばした。
 いつの間にか、居眠りをしていたらしい。
 乱打する心臓。
「うなされてたよ」
「夢です………ひどい悪夢でした」
 君が死んだ夢でした―――付け加えそうになり、別の表現に切り替える。
 心配そうに自分を見下ろしている明るい鳶色まなざしに、高遠は、何気なさを装う。
 ホッと、緊張を解いたはじめが、肩をすくめた。
 大丈夫、彼はまだなにも気づいてはいない。
 心臓に悪い夢だった。
 そう、とても。
 悪夢の苦さに、高遠の整った口角が、ゆがめられた。
「紅茶を淹れて来ようか。たしか、アール・グレイのいいのがまだあったよなぁ」
 恋人のいまだ薄い背中を見やりながら、高遠の金の瞳には、悪夢の名残を見ているような、どこか辛そうな影が降りていた。
 硬質な音を立てて、はじめが紅茶を運んできた。
 テーブルを挟んだ向かい側のソファに座り、はじめが紅茶を飲む。かすかに仰のいた喉の白さが、高遠の目に印象的に映った。
「どーした? アール・グレイ、好きだったろ」
 どこか不安そうなはじめの声に、自然と手がティー・カップに伸びる。
 彼を不安がらせてどうします――自分を諌めながらカップを持ち上げると、はじめがホッと安堵した表情を見せた。
 平然を装いながら、はじめは、不安がっている。それを痛いほどに感じながら、高遠は、カップに口をつけた。
 紅茶のかおりが、ぬくもりが、全身のこわばりを溶かしてゆく。
「ああ、はじめ。君の淹れる紅茶はいつも美味しいですね」
「へへ」
 照れてへらりと笑う恋人の手を、軽く握る。
「え、えーと。晩飯、なんにする」
 焦ったように手を引こうとするのを、強引に引き寄せた。
 テーブルの上の茶器が、硬質な音をたてて、高遠の行動を非難する。
「君がいいです」
「いや、そういうことじゃなくって」
「夕飯よりも、君を食べたいですね」
 どきりとするほど鮮やかな笑みをうかべて、高遠ははじめを見上げた。



 けだるい。
 はじめは寝返りを打った。そんな動作すらもが、腰にひびく。と、背後から伸びてきた腕が、頭を抱え込んだ。
 起こしたのかと思ったが、条件反射のようなものだったようだ。
 まぁ、いいけどな。
 こいつとこういうことをするのは、悪くない。そう、時々たがが外れたように激しいときがあって、泣き叫んでしまうときがあるけれど、おおむね、高遠はやさしい。愛されているんだと思う。それに、自分も彼を愛しているんだろう。彼の瞳に、何気ない挙措に、意味を同意を求めようとしてしまう。まるで、初恋を知ったばかりのように、それを失わないように必死になっている。
 一年半前になるだろう、あの日気がついたとき、そこには、端正な顔があった。
 泣き笑いのように表情を歪めて、めずらしい金の瞳がはじめを見下ろしていた。
(オレの一番初めの記憶ってそれなんだよな)
 わずかに一年と半年分の記憶しか、はじめにはない。だから、この好きは、もしかしたら、所謂インプリンティングというやつなのかもしれないと、思うことがあった。
 卵からかえったばかりの雛が、黒い頭の雄鶏を親だと思って追い掛け回している――そんな情景がまぶたの裏に浮かんできて、はじめは声を押し殺して笑った。
 記憶のすべてを失ってしまった自分と、そんな自分のことをすべて知っているだろう高遠遙一という男。この、人里はなれた辺境の地には、ほかには誰も住んでいない。いきものをはぐくむことのない痩せた赤土に、嘘のようなと言ってことばが悪ければ、奇跡のような緑に囲まれた堅牢な石の家が建っている。断崖絶壁の上、あとは、遥か眼下に海があるだけだ。
 ほかに動くものといえば海鳥ていどの寂しい土地に、ふたりきり。まるで、なにかから逃れてでもいるかのようだ。
 いったい何があったんだ―――
 あんたは、こんなところにいるような人間じゃないだろうと思うんだがな。
(なくなっちまったオレの過去ってどんなんだかな)
 何度、口に出して訊こうと思ったか。
 けれど、あの金のまなざしの奥に、まだ癒えきっていない傷のようなものを感じて、口にできないでいる。
(いつか、おまえの傷が癒えた時でいいんだけどさ、教えてくれるかな)
 心の中でつぶやくと、はじめは高遠のぬくもりに包まれて、目を閉じた。
 そんな彼を、金の瞳が見つめていることなど、はじめは知るよしもない。
 愛しいものが再びの眠りに落ちてゆく気配を感じながら、高遠は、その鳶色の髪を飽かず弄ぶのだった。



 厳しい冬が日一日と近づいてくる。
 家の周囲の針葉樹以外の木々はすっかり葉を落とし、痩せ衰えた屍が林立しているかのようだ。
 寝室の窓から急速に暮れてゆこうとしている外を眺めやりながら、はじめは肩をすくめた。
(ちゃんと客の相手ができてるんだろうな)

 ちょうど夕飯の支度をしているときだった。自分のものでも、高遠のものでもない、ひとの気配を玄関に感じた。
 珍しいな――事実、はじめが知るかぎり、ということは一年半ほどの間ということだが、この最果ての地を訪ねてきたものはおろか迷い人のただの一人も存在しなかったのだ。
「はい?」
 ドアを開けたはじめは、夕焼けの中にたたずんでいるふたり組に、怪訝な顔をした。
 しかし、それは、訪問者のほうも同じだったらしい。玄関にたたずむはじめを認めて、ふたりは固まった。
(?)
 まるで幽霊を見るような―――青ざめ顔をこわばらせた表情ではじめを見上げた、青灰色の髪に灰色の瞳の三十代ほどに見える男と、背後に立つ年かさの無精ひげを生やしたよれよれの男かは、しばらくの間、太古の神話にある、女神を見て石に変えられたという者たちのように、身じろぎもしなかった。しかし、
「うちに用? それとも、迷った?」
と、訊ねたはじめに、青灰色の髪の男が前にかしいだ。
「おいっ? 大丈夫かっ」
「警視っ」
 とっさに手を出したはじめの腕の中に、男が崩れ落ちる。
「うわっ」
 しかし、はじめには、男を支えるだけの力がない。
 尻餅をついたはじめの上から、男をはがし肩に担ぎ上げた。そうして、はじめを助け起こしたのだ。
「大丈夫か」
「あ、ああ。ありがとう。で、あんたたちは、なに?」
「地獄の傀儡子…………はここに?」
 無精ひげの男の肩から降りた男が、かすかに震える声で、そう訊ねた。
「地獄の?」
 首をかしげたはじめに、
「高遠遙一だ」
 言い直す。そうして、自己紹介をしたのだ。
 自分をさして明智健悟、無精ひげの男を、剣持勇だと。
「ああ、高遠に、用ね。じゃあ、こっちだ」
 高遠は自分の部屋で本を読んでいるか、寝ているかだろう。ふたりには応接室で待ってもらおうとはじめは考えたのだが、その必要はなかった。
 騒ぎを聞きつけたのか、階段を下りてきていた高遠に、ふたりが気づいたからだ。
「地獄のっ」
 駆け寄るふたりに、
「やあ、いらっしゃい」
 地獄の傀儡子と呼ばれた高遠は、階段の途中から声をかけた。
 何か言いかけたふたりに、
「そこが応接室です。そこで待っていてください。逃げませんよ」
 ふたりが彼の指示に従うのを待って、高遠ははじめを手招いた。
「はじめ」
 端正な顔に笑みを浮かべる。
「すみませんが、私がいいと言うまで、寝室から出ないでいてほしい」
「でも……」
「おねがいです」
 いつになく真剣な、今にも涙を流すのをこらえているかのような表情で、高遠がはじめを見上げる。もとよりそんな高遠に、逆らえるはじめではなく、ことば少なく諾と答えて、はじめは今高遠が下りてきた階段を上ったのである。



「久しぶりですね、警視、それに、警部」
 はじめが沸かしておいた湯を使い、紅茶を淹れた高遠が、テーブルの上にふたり分のティーセットを並べた。
 自分で淹れた紅茶を一口すすり、
「やはりはじめが淹れたのには適いませんね」
 高遠は独り語ち、サイドボードからブランデーを取り出して紅茶に数滴落としこんだ。
「何をしにきたのか、訊かないのか?」
「訊く必要はないでしょう」
 かすかに音をたててカップをソーサーに戻した高遠が、足を組み替え腕を組む。
「噂は、本当だったんだな」
「さぁ。私は警視が言う噂がどれをさしているのか知りませんから」
 嘯く(うそぶく)ように、高遠が返す。
「……地獄の傀儡子が生きている」
 明智の声が、低く重く軋む。
「そんな噂が、あんたが死んでだいたい一年後だったか、セントラルにまで聞こえてきた」
 後を引き継いだのは、剣持だ。
「それだけですか?」
「……私がセントラルで聞いた時は、まだそれだけでした」
 今は知らないということだ。
 だが、このふたりには、それだけで、真偽を確かめるのには充分な噂だったろう。
「一年……ですか。もう少し早くここがわかるかと思ったんですけどね。案外かかりましたね」
 高遠の口から出た思いもよらぬことばに、剣持の瞳が見開かれる。
 明智はといえば、あらかじめ予想していたのだろう、平然とした面持ちで高遠を見やっている。
「まさか……噂を流したのは?」
「そうです」
 ゆったりとうなづく。
「死んだはずの私が生きていると訊けば、あなたたちが必ず来るとわかっていましたからね」
「ふうん」
 満たされた紅茶はすっかり冷めきっている。しかし、明智はそれに手を伸ばし、口をつけた。
 喉が渇いていた。渇いた喉に、冷めた紅茶が甘い。
「死んだというのは、やはり狂言でしたね」
「―――」
「ですよね。愚問でした。では、死んだふりまでして姿を消した君が、手間暇かけて噂を流してまで私を呼んだのは、まさか」
 視線で、二階を指し示す。
「そうです」
「賢者の石?」
 青灰色の瞳が、高遠をまっすぐに見つめる。
 高遠の金目が、明智の青灰色のまなざしを見返す。
 やがて、
「そうです」
 明智のまなざしが大きく見開かれ、ぐいっと高遠に顔を寄せた。
「今すぐ賢者の石を返しなさい」
 真摯な表情で詰め寄ってくる明智に、高遠の秀麗な眉間に縦皺が刻まれた。
「無理ですね」
 重い口調だった。
 かつて聞いたことがないほどに、厳しい口調だった。
「どうしてです」
 それでも明智は、一歩も引かない構えを解かない。それもそのはず。賢者の石は、政府が厳重に保管していたこの国最高の機密だからだ。
 明智と剣持とが守るそれがなにものかに盗まれたのは、三年前のことだった。
 彼らがそれを心の底から取り戻そうとしていることを知りながら、呼び寄せておきながら、返すことはできない。

 なぜなら――――

「そんな」
 悲鳴じみた声で、剣持が喘ぐ。
「そういうわけです。数日泊まっていくといいでしょう。私は逃げも隠れもしませんから」
 いつの間にかとっぷりと暮れた窓の外に、部屋の中も闇に染まっている。ふたりの追跡者の顔も、うっすらと輪郭が確認できるていどだ。高遠は立ち上がり、ドアの脇にある照明のスイッチを探った。
 数瞬後、ふたりの姿が、照らし出された。

 

「あー、うまかった」
 腹をさすりながら椅子の背にどっかともたれる剣持を、
「行儀が悪いですよ」
と、明智がたしなめる。
「ちょっと腕を振るってみたんだよな」
 食後の紅茶を運んできたはじめが、うれしそうな笑顔をふたりに向けた。
 それを見たふたりの脳裏に何がよぎったのか、彼らははじめから目を離すことができなかった。



「なんか妙なことになってきましたね」
「………」
 客間のベッドに横になった剣持が明智に話しかける。
「はじめくんのことですか」
「はぁ」
 何年ぶりになるのだろう。
「地獄の傀儡子が我々の前で死んで、埋葬されてから、三年です。ということは、我々がはじめくんに最後に会ってからも、それくらいになるということです」
「ぜんぜん変わってませんでしたね」
「高遠……地獄の傀儡子は老けたようですけど」
「老けたって……警視。ヤツはまだ、二十代ですよ」
「落ち着いたということでしょう」
「そっすね」
 それっきり、ふたりは闇の中で黙り込んだ。
 しんとした空気の中、沈黙が闇に溶けていった。



(……地獄の傀儡子?)
 ふたりの訪問客が口にした、唯一の高遠の過去に関する手がかりは、それだけだった。
 気になる。
 気にならないはずはないのだ。
 ことは、恋人のことである。
 おそらく、彼らは、自分の知らない高遠のことをいろいろ知っているにちがいない。
 高遠について自分が知っていることといえば、
(ものぐさで、やさしくて………すけべってことだな)
 それらは、自分が彼と暮らして知ったこと。なぜ彼がこんな辺境に住んでいるのか、ここに来る前の彼が何をしていたのか、自分は一切知らない。それは、自分自身の過去を知らないということともあいまって、不安材料のひとつだった。
 けれど、あの日、目覚めたとき、泣きそうな顔で自分を見下ろしていた高遠の姿だけで、そんな不安など、些細なものだと思えもするのだ。だから、互いの名前と自分たちの関係を教えられ、それ以上の疑問は持つまいと決意したのだったが。
(まぁ、高遠が教えてくれるのを待つつもりは待つつもりなんだけどな)
「どうしました? 眠れないのですか」
 背後から伸びてきた手に、
「そういうわけじゃ……ないけど。……ちょ、ちょっと、今日はまずい…………あっ……」
「気にすることはありません」
 いたずらなくちびると手が、はじめを煽ってゆく。
 かすかな痛みとそれを上回る快感の波に、はじめは翻弄され、飲み込まれていった。



 気絶するようにはじめが眠ったのを確認して、高遠はそっとベッドに上半身を起こした。
 立ち上がりかけて、眩暈(めまい)に襲われる。
 からだに残る快楽の余韻が、手足の先から冷えてゆく。
 全身が小刻みに震えだす。
 馴染んだ感覚だった。
 震える手を伸ばし、サイドテーブルの小引き出しから薬包を取り出し、開いた。そこには、赤黒い小指の先ほどの錠剤が数粒転がっている。一粒を口に含み、高遠は嚥下した。
 からだの中心からすみずみへまで広がってゆくあたたかさを、目を閉じて味わう。
 やがて、高遠のくちびるから、深いため息が押し出された。
(もうあと三粒ですか………。ふたりはタイムリーに来てくれましたね)
 独り語ちると、高遠は、恋人の褐色の髪に手を伸ばした。



 それは、悪夢だった。
 ずっと、嫌ってる相手だった。
 賢者の石を作り出したのが今は亡い祖父だと知られ、家族を亡くして呆然としていたところを言葉巧みに、騙された。
 巷を恐怖に陥れていた地獄の傀儡子に攫われ、なにかと執着されて、嫌がるのを無理やり抱かれた。
 逃げるたびに連れ戻されて――
 だから、嫌っていると、そう、思っていた。
 なのに!
 いつの間にか自分の命などよりもはるかに大切なものになっていただなどと、知りたくなかった。なのに、知ってしまった。そんな、相容れない存在であるはずのヤツを狙う銃口。
 ほかの誰も気づいてはいない。
 ただ、闇雲に、走った。
 守れることを、あいつを、失うくらいなら、自分の命を投げ出してやる。小説などでよく語られる、そんな甘ったるいことを、心の底から願った。
 だから、からだに灼熱を感じたときも、笑っていられた。
(おまえが望みをかなえるところを、見ることはできないけど、おまえの盾になることができた。あんたを守れてよかった)
「高遠……」
 最期の最期、愛していると知ってしまった金のまなざしを見上げて、名前をつぶやいた。

「高遠ッ!」
 喉の奥から搾り出されるようにほとばしった悲鳴に、眠りが破れた。
 心臓が痛い。
 厭な汗に、からだが、冷たい。
 全身が小刻みに震え、激しい動悸に耳の付け根が痛んだ。
 無意識に恋人を求めてさまよう手に、熱が失せたシーツだけが触れた。
「高遠?」
 震える声で、恋人を呼ぶ。
 闇に閉ざされた室内に、彼の気配は、感じられなかった。
 しんと静かな部屋の中、自分の鼓動だけが、耳の奥で聾がわしい。
「夢……だ」
 言い聞かせるようにつぶやく。
 しかし、勝手に夢を反芻する脳に、情景が鮮やかさを増してゆく。
 自分を抱きしめている高遠。今よりも若い高遠の顔。彼だけを見ていた自分の視界の端に、青ざめた幾多の顔。その中には、突然の訪問客である明智賢悟と剣持勇の顔も、あった。
 冷たい汗が、背筋を濡らす。
「夢なんだ」
 そうでなければ。
「高遠、夢だよな」
 すべてを話して、夢だと断じてほしかった。
 つまらない夢を見ましたねと、笑い飛ばしてほしかった。
「どこだ?」
 高遠を探すべく、はじめはベッドを抜け出した。



 ひとの気配に最初に気づいたのは、さまざまな疑問に眠れないでいた剣持だった。
 からだを横たえていたベッドの上に起き上がった剣持は、点された灯りの中に、高遠の姿を見出した。
「高遠………?」
 剣持が緊張する。
「すみません。起こしてしまいましたか」
「っ」
「ああ、そう緊張することはないですよ。べつに、君たちを殺しにきたってわけではありませんから」
「……明智警視に用ですか?」
「そうです。深夜に悪いとは思うんですけど、起こさせてもらいますよ」
 そう言って、明智の肩をゆする。
「明智警視」
 ぼんやりと起き上がった警視だったが、
「すみませんけど、あなたに頼みがあるんですよね」
 かつて聞いた記憶がないほど真剣な声に、眠気がたちまち消滅する。
「それは、あの少年のことですか?」
「そう。君に話していないことがある」
「わかりました」
 すわれば――と示された明智の隣に腰を下ろし、高遠は、話しはじめた。



 はじめは、自分をかばって、死んだ。
 ずっと自分の隣にいるようにと、自分でも信じられないような執着を抱いた存在の突然の死を、高遠は、彼の死後一週間が過ぎようというのに、受け入れることができなかった。
 自分をかばっての死。
(ばかですね。君を攫って、好き勝手した私をかばったりして)
 ただひとつの望みは、はじめの生。
 生きて、となりにいてほしい。
 ただそれだけなのに。
(君と引き換えに得た生など、なんの意味もありません)
 自分の命が助かっても、そんなもの、チリほどの価値もありはしない。
 すべてが、虚しい。
 はじめが守ったこの命すら、はじめの永遠の不在を思い出させる忌々しい証のようで、切り裂いてしまいたくなる。けれど、
(君の望みが、私の生だというのなら、自死はしないでおきましょう。けれど………)
 はじめの墓を見下ろし、彼の心にわきあがってくるのは、打ち消しても打ち消しても響いてくる、悪魔のささやきだった。

 しばらくして、地獄の傀儡子の死が報じられた。
 警官隊に包囲されての、あまりにもあっけない死だった。
 その三日後、はじめの墓が荒らされ、死体が盗まれたのである。


「じゃあ、あのはじめくんに………」
「そう。だからこそ、君たちに賢者の石を返すわけにはいかないのですよ」
「はじめくんの死体が盗まれたとは、変だと思ってたのですけどね」
「冬だったのが、幸いでしたよ。彼は、生きていたときと同じ姿で、眠っているかのようでした。…………盗んだ後は、からだが朽ちないように、保存しておくのが大変でしたけどね。そうして、賢者の石を彼に馴染ませるのに、一年半もかかりましたよ。残念なことに記憶はもどらなかったのですけどね。それでも、彼は紛れもない、金田一はじめなのですよ」
「でも、なにか。捕まれば死刑確実の君が私たちを呼ぶほどですから、なにか大変な問題が起きたのですね?」
「ご明察。さすがですね、警視」
 何か飲みます? と、訊ねる高遠に、明智は首を振る。
 肩をすくめて、高遠は、ベッドサイドの水差しを取り上げてコップに水を注ぐ。飲み干し、一息ついた。
「私はもう、そう長くはないのですよ」
 告白の内容に、明智と剣持とがその場で固まった。
「……賢者の石に、何を」
「なにも――と、言いたいところですけれど、ひとの命をよみがえらせるのには、万能の石と呼ばれるものでも、完全とはいかなかったようです。どうやら、命の代価に寿命を差し出す羽目になったようです」
「寿命を……ですか」
「最初、石の効き目は完璧なものだと思ったのですけれどね」
 高遠がクスリと、笑う。
「後払いとは。しかも、分割払いとは、洒落たことをする」
「?」
 明智と剣持とが顔を見合わせる。
「警視、君は、はじめを好いていましたよね」
 突然の話題転換だった。
 とっさに赤くなった明智が、
「な、なにを」
 うろたえる。
「隠すことはないでしょう。今の君がどうかは知りませんけど、三年前はたしかに、私と同じ意味で、君もまた、はじめを愛していましたよね」
 金の瞳が、青灰の瞳を覗き込む。その真摯な光に、明智は折れたのだ。
「たしかに。私も、はじめくんを愛していたよ。多分、今でも」
「それを聞きたかったんです」
 ふわりと笑い、高遠がつづける。
「はじめは、三年前と少しも変わっていないでしょう。あれは、老いないんです。というか、心臓が動いているのも、呼吸しているのも、血液が体中をめぐっているのも、すべては、錯覚でしかないということです。そう、あれは、死体に魂を繋げただけの不完全な存在に過ぎません。ですから、私がいなくなれば、はじめは、おそらく三日ともたないでしょう」
「それはいったい」
 どういう意味です―――そうつづけようとして、
「はじめが人並みに動いているのは、ひとの命を奪っているからにほかなりません」
 いっそ冷徹なまでに高遠が言ってのけたことばを反芻し、
「まさか」
 明智の顔が青ざめる。
「そう」
「おまえの気を、喰らっている?」
 静かに、高遠が瞳を閉じる。
「ひとの気を喰らって、生きている………」
「私が、無理やりによみがえらせて、彼の在り方を狂わせた。ですから、私が食らわれるのは、なにものかに下された罰でしょう。潔く受け入れますよ。しかし、彼は、はじめは、それを知らない。できれば知らないままでいてほしいのですけど、それは、無理でしょうね。彼は、聡いですから。いずれ気づく。仮に気づかなかったとしても、私が死ねば、気づくときが必ず来ます。私は、彼を死なせたくはないのですよ。警視。ですから、そのときは、」
「私に、おまえの代わりをしろ……と?」
「おまえは、警視に死ねと」
「剣持くん、君は黙ってなさい」
「ええ。私はひどいことを言っているでしょう。でも、君なら」
「最低ですね。犯罪者とはいえ、もうすぐ死ぬでしょうものの末期の願いを突き放せるはずがないでしょう! 一度死んだぐらいでは、その腹黒さはかわりませんね」
「しかたないでしょう。これが、私ですから」
 いっそ誇らしやかに高遠が言ってのけた時だった。
 ドアの外で、ひとの倒れるような音がした。
「はじめっ」
 誰よりもすばやい反応をみせて、高遠がドアを開けた。
 暗い廊下にうずくまるはじめの、褐色の髪が、ドアを開けた風圧に揺らいだ。


 心臓が、からだの中で暴れている。
(これが、錯覚?)
 自分を抱きしめる高遠のぬくもり。
(こいつの命を、オレが奪っている?)
 そう長くはない―――
(嘘だ)
 耳を塞ぐ。
(イヤだ)
 目をつむる。
(信じたくないっ)
 首を振る。
(けど、オレが生きていると、高遠の命が失われるんだ)
 こみあげてくる涙。
(なら、簡単なことじゃないか)
「はじめ」
 目を開き、自分を見つめる端正な顔を見返す。
「高遠、愛してる」
 にっこりと笑いそう告げると、はじめは高遠にくちづけた。
(だから、もう、遅いかもしれないけれど………)
 とんと、かるく、高遠を突き放す。
 そうして、はじめは、後も見ずに駆け出したのだ。

「高遠、愛してる」
 鳶色の瞳の奥に、高遠は恋人の決意を見て取った。
 厭な予感が、背筋を這いずる。それに、ほんの一刹那だけ気をとられた。
 軽い衝撃。
 遠ざかってゆくはじめの足音。
 高遠は、考えるまも見せず、はじめを追う。
 元来があまり運動神経がいいとはいえないはじめである。じきに高遠に追いつかれた。
「はじめ」
「はなせ、はなせよっ」
 腕をつかまれ、必死にからだをひねるが、高遠ははじめをはなさない。
 はじめが高遠から腕を解放することができたのは、突然の大地の揺れのためだった。
 したたかに突き上げるような衝撃が、漆喰壁に皹を走らせ、一瞬の後に、壁が崩れ落ちた。
 剥落した漆喰は、偶然にも高遠を直撃したのだ。
 その場にうずくまった高遠に、「大丈夫か」と声をかけたかったが、自分は今高遠から逃げているのだと、踵を返す。
 数度頭を振り、ふらつきながらも立ち上がった高遠は、
「はじめ」
「くんな!」
 拒絶の声に、高遠の足が止まった。
 高遠の背後から、明智が、剣持が、下手に動くこともできずに、イヤイヤと首を振るはじめを見ていた。
「オレが、オレがいると、あんたが、死んでしまう。そんなの、オレには耐えられない。だって、オレは、あんたを助けるために死んだんだ」
「はじめ、いいから、いいこだから、こっちへ」
 差し伸べる手を、かたくなに拒絶する恋人に、かすかに、高遠の眦が切れ上がる。
「はじめ!」
「助けるために死んだのに、なのに、あんたがオレのせいで死ぬなんて。それくらいだったら、オレが、死ぬ! そうすれば、あんたは、まだ、生きていられる。オレの望みは、あんたが、生きていることなんだ」
 喉も裂けよと叫び、はじめは、高遠に背を向けた。
 はじめの姿が見えなくなる。
 しばらく呆然と我をなくしていたらしい高遠が、剥落して骨組みを見せている壁に両手を打ちつける。壁に打ちつけたままの両の拳に白い額を乗せ、
「それでも! 君のいない生など、私には価値がないのですよ」
 血を吐くような独白だった。
「いいでしょう………」
 低くつぶやくと、高遠は顔を上げ、はじめを追いはじめる。
「高遠っ」
 駆け出した高遠を追って、明智と剣持もまた走り出した。

「いったいどこに………」
 月の光に影を落とす、木々のつらなり。
 ざわざわと冷たい風が、木々の枝を揺らす。
 冬めいた夜空を、黒い雲が駆け抜ける。
 月が雲に飲まれ、吐き出される。
「どこか、はじめくんのお気に入りの場所とか」
 明智の示唆にしばらく考え込んだ高遠が、
「もしかすると」
と、木立の中に分け入った。
 よみがえったばかりのはじめがリハビリに、崖まで散歩をしていたことを思い出したのだ。
 はじめは、崖から水平線を見るのが好きだった。
 ―――すべてに溶け込んでしまいそうで、安心すると、言っていた。
(いそがなければ)
 あんな崖から飛び降りたりしたら、人間などひとたまりもない。
(頼む。間に合ってくれ)

 雲間から吐き出された月が、陰画紙のような光景を照らし出す。
 闇の陰影。
 波間に踊る月光に、はじめの全身がきらきらと輝き、高遠の不安をあおる。
「はじめ。こっちへ」
「いやだ」
 かたくなな態度に、高遠の秀麗な表情が、ゆがむ。
「オレはおまえに迷惑をかけたくなんか、ないんだ」
「迷惑なんかじゃありません」
「あんたを、殺す存在なんだぞ」
 泣きそうな顔をして、はじめが、高遠を見やる。
「オレがいる限り、おまえは生気を吸われてしまう。そんなの、オレは」
「いいですか、はじめ。君が死ねば、私も、君の後を追いますよ。君は、私を生かそうと自分を殺すのでしょう、けれど、君は君が死ぬことで、私を殺すんですよ」
「そんな」
 力ない悲鳴が、その場にこぼれ落ちる。うろたえたはじめが、首を左右に振りつづける。
「なにが、そんなです。言ったはずでしょう。君がいなくなったりしたら、私は気が狂ってしまいます――と」
 一気に数歩進みより、はじめに向かって手を差し伸べる。
「悪党だ。おまえは。いったい、オレにどうしろって言うんだよ」
 張りのない、泣き笑いのような、声だった。
「生きてください」
「もともとが、死人だろ、オレは。オレは、おまえに迷惑をかけてまで生きていたくない」
「それでも、です。君をよみがえらせた、不完全によみがえらせたのは、私の罪です。その上で生きろと言うのは、私のエゴです。わかっていても、生きていてほしい。ダメですか?」
 金の瞳が、惑い揺れる鳶色のまなざしを、凝然と見つめる。
「おまえのいない生を、オレに強要するなんて、ずるいぞ」
 自分はこの恋人に勝てるはずがないのだとうなだれたはじめに、満面の笑みをたたえた高遠が、残る距離を一気に無にしようとした。

 そのとき――――

 木立の中で高遠の姿を見失った明智と剣持が、ようやく彼らを見つけ出したときのことだった。
「はじめくん」
 よかった―――と、胸を撫で下ろしかけ、逆転する。
「!」
 それは、誰の、悲鳴だったのだろう。

 それは、突然のことだった。
 再び、大地が、揺れた。
 大きく突き上げるように地面が揺れ、明智と剣持は足元を掬われ、支えを求めずにはおれなかった。
 明智と剣持の揺れる視界の中で、突然、高遠の足元が崩れた。
 はじめが、高遠を突き飛ばし、高遠の伸ばした手が、虚空を掻く。
 かろうじて掴むことができたはじめの右手首。
 気を失っているのか、はじめの反応はない。
 揺り返しに、大地が苦鳴を上げる。
 明智も剣持も、足を掬われ、ふたりのもとになかなかたどり着かない。
「はじめくんっ」
 明智と剣持の悲鳴が、ひときわ大きく響いた。

 高遠が、大地の揺れをこらえ、はじめを引き上げようと必死になっている。
(これでは、あの時と同じじゃないですか)
 自分の命を救って、恋人が死ぬ。
 三年前の悪夢をなぞるかのように、繰り返されようとする運命。この皮肉が、賢者の石を使った罪だというのだろうか。
 一度死んだものがよみがえることを、自然は、神の摂理は、決して許さないのか。
 視界が、涙でかすむ。いや、これは、汗だ。汗が、目に染みるだけだ。
「はじめ……」
 もう少しだ。
 気を失っているなら、失っているままでいてくれ。
 左腕が抜けてしまいそうだ。
 しかし、腕などいくらでも捧げよう。
 ここで、諦めれば最後、海がはじめを飲み込むんでしまう。
(私から、二度もはじめを奪うな)
 何とも知れないものに祈る。
 神なのか、悪魔なのか、それとも、運命か、摂理か。もしくは、自然そのものなのかもしれない。
(なんだろうとかわない。はじめを救ってくれるのなら)
 残る右手を大地つく。全身に力を込めて、引っ張り上げようとする。しかし、もう少しと思うたびに地面が揺らぎ、危ういバランスをあざ笑う。
 あと少しなのに。
 ぎり……と、男にしては赤すぎるくちびるを高遠が噛みしめたときだ。
 音たてて、高遠が右手を突いている崖が、崩れ落ちた。
 「危ないっ!」
 あと少し遅れていれば、かろうじて保ち堪えていた均衡が、砕け、高遠ははじめもろとも海へと飲み込まれただろう。
 しかし、明智と剣持とがからくも間に合った。
 明智が高遠の腰を抱え、そのベルトを剣持が掴み、残る腕を木の幹に絡ませる。
「剣持くん」
「わかってます」
 ふたりとも、必死である。
 まだ、地面は揺れているのだ。
 こんなに長い地震など、このあたりでは珍しい。地震に慣れていない彼らである。
「……ん? ああ、高遠、無事だったんだ」
 目の前で笑んだはじめに、状況も忘れて、高遠はできる範囲で天を仰ぐ。
「ええ。君のおかげです」
「よかった」
「はじめ。いいですか、左手を伸ばしてください」
 だらりと下がったままの手をつかもうと、高遠の右手が伸ばされる。しかし、自分の状況を見て取って蒼白になったはじめが、静かに首を振った。
 青ざめた顔に笑みを貼りつけて、静謐な光をまなざしに宿して。
「ダメだ。右手は、折れたみたいだ。それに、肋骨も。多分、肺も心臓も。本当に、おしゃかだな、オレの」
「治してあげます」
 また同じやりとりか――と、高遠の眉間に縦皺がくっきりと刻まれる。
「何度でも。だから、グズグズ言わずに、私にすべてを任せなさい。君は、私の帰る場所でしょう」
「ああ。そうだ。おまえは、オレが帰る場所。………ばかだよな、おまえって」
「ええ。君と同じくらいに」
 ふたりが、顔を見合わせて、笑った。

「警視っ!」
 明智と剣持が力をあわせて、そのときようやく、ふたりを崖から引きずり上げたのだ。


 長い夜が明けた。
 寝室に、カーテン越しの朝日が差し込む。
「結局もとの鞘なわけですね」
「警視、ほんっとうにいいんですか」
 ため息をついた剣持に、
「ふたりとも、疾うに死んでるんですよ」
と、明智。
「ありがとうな」
と、骨と内臓とを治療されベッドの上に横たわったままで、はじめが苦笑いを返す。
「いいんですね、ほんとうに、それで」
「しません。ふたりで話しあいました」
「後悔はしない?」
「しない」
「しません」
「結局無駄足だったわけですね」
「ガセネタをつかまされたってことか」
 あーあと、盛大にため息をつきながら、剣持が頭を掻く。
「しかたありませんね。たまにはこんなこともあるでしょう」
 明智が、いたずらそうに、しかし、瞳の奥に痛みを潜めて、言い切った。
「必要なものがあれば、持って行ってください。もう、私たちには必要がないものですから」
「荒野を越えるのは大変だろうしな」
「助かりますよ。遠慮なく。それと………」
 ひょいと明智がはじめの顔の上で上半身を傾けた。
「っ!」
「警視っ」
 真っ赤になって絶句するはじめと、叫ぶ高遠。
 そんなふたりに、
「失恋記念です」
 明智が、にやりと、笑った。
「では、ふたりとも、私たちはそろそろ、おいとましますよ」
 いつまでも元気でということばを飲み込んで、明智が、手を振る。その後ろでは、剣持が。
「もう行くのか」
「荒野を越えるのは、時間がかかりますしね。それでは」
 今度こそ、最後になる別れを告げて、ふたりは、ドアをくぐった。
「ありがとう」
 はじめのことばに、背中を向けたままふたりは手を振った。
 流れる涙を、見られたくなかったのだ。
 こうして、明智と剣持は、かつての宿敵と片思いの相手に別れを告げたのである。



 それから一年後、かつては荒野の一軒家であった石の家を訪ねた明智と剣持は、その地の変貌に目を見張った。
 家の周囲の緑は、石の家を飲み込み、少しずつ版図を広げている。
 賢者の石をその身の内に埋めこまれたはじめと高遠の、骸と想いを苗床に、いずれ、荒野は、豊かな森へと姿を変えるのだろう。
 どちらか片方だけでは、生きられなかった、運命の恋人たちを思い、明智と剣持は、かつて石の家があった方へ向かい、黙祷を捧げた。

 一年前には聞かれなかった、小鳥たちのさえずりが、今はまだ森とは呼べない緑の繁から聞こえてきた。
おわり
from 15:21 2003/12/20
to 21:48 2003/12/22

あとがき

 章立てが小刻みやな。読みにくくないといいんですが。
 最初の思惑は、『燃えさかる納屋』……このSSの舞台は納屋じゃないんだけど、はじめ頭の中に浮かんできたのがなぜかその小説の納屋が燃えてるシーンだったのですけど、うだうだと伸びるにしたがって、こんなになりました。
 結局、炎が緑になりました。
 白い崖に赤い荒野って、そんな地形がありえるのか、地理に弱いので、ご容赦ください。
 地震、ここまで揺れたら津波が起こりそうですが、あまり地震のない国ということで、大きく感じたんですよ。慌ててるんだと、思ってください。
 しかし、原稿用紙で53枚。長いですね。長い上に、乙女が入りまくりです。
 それでは、少しでも楽しんでいただけますように。
広告 [PR] 再就職支援 スキルアップ アルバイト 無料レンタルサーバー
HOME  MENU