狼は眠らない 4




≪そ の 三≫


 七月二十八日
 午前十一時
 場所はホテル・メンツハウゼンの玄関前である。POLIZEI印の公用車が五台、アプローチに整然と並んで駐車されていた。制服姿の警官に注意されながらも、野次馬たちは見物と噂話に余念がない。そんな彼らの眼前では、無表情な警官がジッパーつきのビニール繊維の袋をバンに詰め込もうとしている。
 重たそうである。
 袋は、二個。野次馬たちが、息を呑む。でこぼこした質感が、なぜか彼らに恐怖を覚えさせた。あの中味が、おそらくはひとの死体なのだと、彼らは本能で悟ったのだ。
 パシャパシャと音をたてて光るのは、報道陣のカメラだろう。テレビカメラに向かってマイクを片手にあわただしく喋っている人物もちらほら見受けられる。
 ここはロマンティック・シュトラーセと俗に呼ばれている、ドイツ有数の観光地域である。街道沿いにある城やグリム童話の世界を感じさせる街並を売りにしている。この町もご多分に漏れず―だった。しかし、ほかの町ほどには知名度が高くない。第二次大戦中にすら、あまりにも売りがないために、進軍してきた連合軍に無視されて、戦災を免れるなどという歴史があるくらいなのだ。幸いといえば、これ以上の幸いはなかっただろうが………。そんな町でこれほど血腥い事件が起きたのは、戦後初めてのことであった。
 オーナーの配慮で特別にホテルの一室が取り調べに用いられることになった。そこで、真純と俊雄の死体を発見した掃除婦は、州警察から来たという二人の刑事と対面していた。
 扉の外にも二人、制服組の警官がマスコミなどを警戒して立っている。
 がちがちに緊張したライザ・ミュラーは、私服警官に守られるかのようにして、扉から中を覗き込んだ。
 窓を背に正面のソファに腰をかけている、三十才くらいの女性と五十がらみの男性が刑事だった。二人は、静かにライザを観察している。
 中年の掃除婦は、目に見えて青ざめている。それは、困惑と興奮それに恐怖とがないまぜになったものだ。
「さて。フラウ・ミュラー(ミュラー夫人)ですね。私はアルフレッド・リンツ警部。こちらは、カタリナシュトルベック警視です。あなたの見たことを、部屋にはいってからのことを、ありのままに話していただけますか」
 おもむろに口を開いたのは、五十がらみのひとのよさそうな刑事だった。
 ライザは、昂ぶった感情のまま、
「ありのまま? ありのままに喋れって?! そんなのっ! 部屋の掃除が私の仕事ですから、そりゃあお客さんがいらっしゃれば、ドアノブにかけられている札が“邪魔をしないで”になっていなければ入りますよ。スペアキーは支配人さんから掃除のたびに預かることになっています。でなきゃ仕事になりません。だから、鍵を使ってドアを開けました」
 投げつけるような勢いで、ライザが喚く。
 それを黙って聞いていたカタリナ・シュトルベック警視だったが、ライザが一息ついたのを見計らい、
「何か妙な気配は感じませんでしたか?」
 シュトルベックが訊ねる。三十代で女警視といえば、きつめのエリートを思い浮かべがちだ。しかし、穏やかそうで理知的な印象を受ける。一見して職業選択を間違っているようにも思えるのだ。
「そんなものっ!! そんなもの、感じませんでした。いつも通りの手順で、いつも通りに掃除をして、それでおしまい。チップが多ければ嬉しいし、少なければそんなもんだとしか思いません。………むかしの領主の館を改装したホテルですから、ドアを開けてすぐは、控えの間です。今ではそこはバスとトイレ、ウォークインクローゼットに改装しています。クローゼットの扉は全面鏡。寝室側の扉は閉まっていましたから、掃除道具をまとめてあるワゴンを引っ張ってって開けました」
 そうして――と、朝方に見た光景を思い出したのか、ライザは目を眇め口を手で覆った。
「そうして? それからあなたはどうしたのです?」
 生成りのパンツスーツの膝の上で白く長い指を組み、先を促す。その灰色の瞳を見返して、
「人が悪いね、シュトルベック警視さんでしたっけ? 寝室は血まみれ。カーペットはがちがち。あれは、もう、どんなに洗濯したっておちないでしょうよ。ベッドだって入れ替えなきゃならないでしょうし。壁紙も張り替えなくっちゃなりません。天井も。家具だって磨かなきゃならないでしょう。まぁ、しばらくは物好きなお客さんででもないかぎりは泊まろうって思うひとはいないに決まってます。…ええと、一瞬なにがどうなっているのか、わかりませんでした。真っ赤というか、真っ黒というか、茶色って言ったほうがいいんですかしらね。むっとするみたいな変な匂いはするし。あれが血の匂いってやつなんでしょうかしらっ」
 息を継ぎ、ライザはちらりとシュトルベックを見やる。ライザはようやくいつもの調子を取り戻していた。
「そうでしょうね」
 くちびるの端をわかるかわからないか、かすかに引き上げたシュトルベックの印象は、がらりと変わった。人好きのする穏やかな表情が、ひとを突き放すような、厳しいものへと変貌を遂げたのだ。それは、凶悪な事件に対する嫌悪感から発したものだったのだが………。しかし、見る者は自分が見下されているかのような居心地の悪さを覚えてしまう。シュトルベック自身、なるべく気をつけるようにしている表情だったのだが、無意識に現われていたらしい。
 もぞもぞと居心地好いようにと腰のすわりを調節しながら、
「タバコ。警視さんは排斥派ですか?」
 と、タバコを吸う真似をして、ライザが聞いたのは、そのせいだった。
「いや………」
 虚をつかれた格好でそう短く応じる。シュ
 トルベックは仕立てのよさそうな上着のポケットからタバコの箱と細身の銀のライターとを取り出した。
「メントールだけど」
 そう言ってライザに手渡す。
 カチリと、かすかな音がして、ライターに灯が点る。
 煙を深く吸い込み、ライザは、
「とにかく、目が点ですよ。あの日本人のお客は、三日前から泊まってたんですが、昨日娘さんが行方不明になったって、一騒動あったばかりなんですよ。それが今度は、娘さんの泊まってた向かいの部屋から上掛け以外、ベッドと荷物はなくなる。当の本人たちは、バラバラ! でしょう!!」
 紫煙がライザの口から天井へとのぼってゆく。
「それは、誰から?」
 気を取り直したシュトルベックである。
「ビルギッテ。ビルギッテ・ワッツ。………ビルギッテは、廊下の向側の並びが担当なんですよ。っていうか、ビルギッテと私とで三階部分の掃除をうけおってるんですけど、そういう分け方をすると面倒がないでしょう。チップの額も恨みっこなしで…。で、私が悲鳴をあげるのも忘れて座り込んでたところにきて、ベッドがないって、喚いたんです。こっちはそれどころじゃなかったんですけど、彼女にしてみても、寝室のようすに気づかないくらい慌ててたんでしょうよ。で、少しして、こっちっかわの寝室の惨状に気づいた彼女が、今度は大きな悲鳴をあげて………ほかの部屋のお客さんたちが廊下に飛び出してきて、それで支配人が警察に電話したんです」
 一気に喋りきって、脱力したように椅子の背凭れにだらりと背もたれる。そんなライザに、
「どう思いましたか?」
 先を促す。
「なにがです?」
 返すライザの反応は鈍かった。
「なにが起きたと思いました?」
 辛抱強くもう一度訊ねるシュトルベックに、
「なにが……って、部屋はちょっと普通じゃないくらいに血まみれだし、お客のどっちかがどっちかを殺してしまってあわてて死体を隠して逃げたんじゃないかって――。そんなテレビドラマを見た記憶がありましたからね。でも、支配人がなにがあったって聞くから、引っ張って寝室に入ったんです。仕方ないでしょう。一人ではいるのは怖かったんですよ、もちろん。そうしたら、ベッドの上に、二人分のバラバラ死体が、撒き散らされたって感じでのってて………」
 すぱすぱと、忙しなくタバコを吹かすライザだった。
「どうして、二人分だって、わかりました?」
 その質問に、えっ? という表情をして、
「だって。あの部屋に泊まっているのは二人でしたし…ベッドの上に、頭が、二つ、転がって…ましたから………」
「あとひとつ。犯人は人間だと思いますか?」
 シュトルベックは訊ねてみた。本来ならこんなことを聞くべきではないのだ。しかし、訊かずにはいられなかったのだ。そうして、ライザの反応は素早かった。
「モンストゥルム。森のモンストゥルムが出てきたんだって思いますね。あんな殺しかた、人間がしただなんて思えない」
 そう言って大きな身震いを一つした。
「わかりました。それじゃ、もういいですよ。ごくろうさまでした」
 シュトルベックが扉を指差す。それに弾かれるように、ライザは部屋を出て行った。
「森のモンストゥルム……ね」
 ライザがテーブルの上に残していったタバコの箱から一本抜き取り咥えて、シュトルベックは呟いた。それにマッチの火を差し出しながらリンツが、
「なんのことでしょうね」
 と、応じる。
「迷信のたぐい―といったところだろうが………イヤな予感がする」
 独り言のような上司のことばに、
「迷信ですか。それは、厄介ですね」
 どこか苦々しげなリンツの反応だった。
「ああ。その迷信が彼女だけのものなら問題はないだろう。………森のモンストゥルムといっていたからな。解決までに時間が長引けば、長引くだけ、ヒステリックな空気が満ちる。特に、この町はたしか、ローマン・カトリックだったな。まぁ、カトリックに限らないか…。もっとも、キリスト教に限らないとは思うが。宗教の弊害というところだからな。宗教に抑圧された精神が、耐え切れなくなってはじける。そうして生贄を求める。一触即発のヒステリーってところか。それで過去どれくらいの無実の人間が拷問にかけられて殺されたことか。…………中世の魔女狩りの再現にならなければいいんだけど」
 上司のことばに、リンツの顔から血の気が引く。
「解決の糸口は、やはり行方不明の娘でしょうか」
「娘――マリア・カガミハラといったか。…昨日の日中、まず彼女が行方不明になった。その時、荷物はまだ部屋にあったんだな」
「はあ。ライザの話にも出てきているビルギッテ・ワッツの証言があります」
 リンツは胡麻塩頭をバリバリと引っ掻き回した。
「で、その同じ日の夜、母親とその情人が惨殺された。翌朝、部屋の掃除にやってきたライザ・ミュラーが、ベッドの上に死体を発見。ほぼ同時刻ビルギッテ・ワッツが、向かいの部屋からベッドと行方不明の娘の荷物が無くなっているのを発見。騒ぎになって支配人が警察に通報………」
 事件のあらましをまとめてみる。
「行方不明の娘が母親とその恋人を殺害して逃げているというのだったら、迅速解決なんですけどね」
 ハァと、大きなため息をつき、リンツは上司のことばを待った。
「それはありえないだろうね。マリア・カガミハラが筋骨隆々の男だったとしても、ああまでみごとに手足を引き抜くことは不可能だよ。母親のほうは首を捻って殺された後に手足を抜かれたそうだけど、情人のほうは…酷いな………。手足を引き抜かれた後で首を捻られたらしいよ。あと、…腹部を捌くのもな。手術用のメスでもああすぱっとは切り裂けないそうだよ。第一、ホテルの従業員の話では、マリアの身長はせいぜいが百五十センチメートルを越えているかどうかといったくらいで、華奢な少女らしい。
 パスポートが母親のトランクの中から見つかったが………これだ。一見して十三才くらいに見えるが、このパスポートの申請をしたのが、どうやら旅行に出る二月ほど前ってところだな。…十六才だそうだ」
 シュトルベックが投げてよこしたパスポートを開き、リンツはかすかに唸った。写真うつりがいいのか悪いのかはわからないが、そこには、眼の大きな愛らしい少女が、緊張した面持ちで写っている。
 本人を知らないからどうしても外見からの印象に頼ってしまう。意外と第一印象というのは当たっていたりするのだ。もっとも、確率としては七割程度だが。リンツにしたところで、こんな少女が犯人だなどとは、思いたくはない。ひとを殺すのはともかくとしても、四肢を引き抜くことなどは、無理に違いない。
 七割のほうであってほしい―と、リンツは目を閉じるのだった。
「まぁ、たしかに、人間業ではないだろうね。遺留品すら何一つ残ってはいない。―この事件。犯人は捕まらないかもしれないな。しかし、どうして犯人はベッドや荷物を持っていったんだろう………」
 ソファの背凭れに背中を預けたままで伸びをしながら、シュトルベックは独り語ちた。
「マリア・カガミハラの発見と保護が第一ですね」
 そんな部下の発言に、シュトルベックは立ち上がりながら、
「そうだ。まずは捜索隊を組織して。…あとパスポートの写真を引き伸ばして、とりあえずロマンティック・シュトラーセ周辺に貼るよう指示してくれ」
と、応じたのだ。

 七月二十九日
 午後九時
「上月さん。速く」
 先導されるまま、二人はまりあたちが泊まっていたのと同じホテルの一室に案内された。そうして、二人はそこで待ち受けていたシュトルベック警視とリンツ警部に対面した。それより一時間ほど前、彼らはこの地域を担当する警察署の遺体収容所で真純と俊雄の遺体の確認を済ませたばかりだった。
 上月は、鏡原家の顧問弁護士である。三十八才の彼は弁護士としてはまだ若い。しかし鏡原家と上月家とは、昔から家族ぐるみのつきあいをしていた。そんなこともあって、真純が死んだ今、まりあが成人するまでの間、上月が彼女の後見人となるのだった。
 大使館から電話を受けた三村から彼らに連絡がとられ、駆けつけてきたのだ。
 まりあの行方不明を知ってしまって、呑気に総体に出ていられるわけがない。そんなもの、まりあと比べられるものじゃないのだ。もし仮に参加したところで、どうせ成績はぼろぼろだろう。却ってほかの選手の足を引っ張ってしまう。
 誰も、昴一を止めはしなかった。
(無理にでも、真純さんと喧嘩になっても、まりあを止めていればよかったんだ)
 返すがえすも、悔やまれてならなかった。
 真純の死にざまを酷いとは思っても、悲しみは湧いてこない。嫌われていることは知っていたし、自分のほうから特に好かれようと働きかけたこともない。まりあがいさえすれば、昴一にはそれで充分だったのだ。
 そのまりあの生死は、不明だという。
 リンツ警部の口から語られるこれまでの経緯が上月を介して説明された。しかし、どれもこれも不安材料でありこそすれ、安心材料になるものではなかった。

ホテルのオーナーの好意で宿泊先はホテル・メンツハウゼンに用意されていた。その部屋で、昴一は眠れぬ夜を過ごすことになったのである。

 七月三十日
 午前四時
 まだ夜明けには時間がある。
 しずかに、ユーベルはまりあの眠る部屋へとしのんでいた。
 まりあが、そこにいることを確認しないではいられない。
 この幸せが、一刹那の夢のように消えるのではないか。
 まりあのいる、幸福。
 まりあのいる、至福。
 それが、別のものへと変わってしまうのではないか―どうしても、その不安が消えなくて。
 一度味わったこの幸せを、もう失うことは出来ない。失ってしまえば、気が狂うだろう。
 気が狂った自分がどうなってしまうのか、それは、ユーベル自身にもわからないことだった。
 枕もとに、画帳と色鉛筆が散らばっている。絵を描いていて、そのまま眠ってしまったらしい。
 少しずつ、まりあはここの生活に馴染んでいる。まりあは逃げようとしていない。そのことが、ユーベルには嬉しかった。
 ぽっかりと開いた天井から射し込む月光が、まりあと彼女の作品とを照らしていた。
 開いたままのスケッチブックを何気なく覗き込んだユーベルは、打たれたようにその場に硬直した。
 スケッチブックいっぱいに、様々な角度から描かれている若者の顔。そのいずれもが、やわらかなタッチで描かれている。やさしそうな、表情。困ったような、無表情な、もしくは、ほほえみ。それらが、自分だと気づくまでに、しばらくの間が必要だった。
 気づいた理由は、瞳の赤だった。その顔のどの瞳も、彼と同じ赤い色で着色されていたのである。
 まりあには、本当に自分がこんなふうに見えているのだろうか? 
 怖い――と、ユーベルは思った。
 自分のことを、ひとではないと知っていながら筆の蹟は、どれもがやわらかでやさしい。
「マリア…」
 そっと呟いてみる。
 甘く、心地好い響きが、胸の奥底を沸き立たせる。
 幸せだった。
 どうしようもなく。
 沸き立つ想いにかりたてられ、思わずまりあの頬へとくちびるをおとすユーベルだった。
 冷たくて、しかし、しっとりとくちびるに馴染む感触。なにものにも代えがたい少女の、やわらかな頬。
 自分を恐れず蔑まず、ただありのままに受け容れてくれる。その懐の深さは、確かにマリアのものだった。
 かつての過ちを二度と繰り返すまい。
 自分自身の臆病から少女を拷問死へと追いやってしまった、愚かで臆病な、過去だった。
 まりあの冷えきっていた頬に、ユーベルは思いついた。
 しっかりとからだに巻きつけたマント。もしかすると、一枚では頼りないのかもしれない。自分は感じないが、寒いのではないか。そう思ったユーベルは、音をたてないように、気を配って、部屋から出て行った。
 ユーベルが向かったのは、庭だった。
 月明かりに照らし出された薔薇の庭。
 その幻想的な眺めを一顧だにせず、ユーベルは柱の一本に近づいた。
 薔薇に覆われた柱の表面を探り、巧妙に隠されているからくり仕掛けを操作する。と、間断なく聞こえていた水音がやんだ。見れば、大理石の管から流れ落ちていた水が、とまっている。かすかな、何かが地下で軋る音。やがて、大量の水が排水されてゆく音がそれに重なった。渦を巻いて排水口から出てゆくのは、泉水の中の溜まり水である。
 残った水が排水口に吸い込まれてゆくひときわ大きな音が、夜気を震わせた。
 ユーベルはおもむろに縁を跨ぎ越え、水の干された泉水の中に入った。排水口に手を入れ、鎖に繋がった合金の輪を引っ張っる。
 二度目だからなのか、一度目よりも抵抗は少ない。
 ギリギリ…と、歯車が軋るような鈍い音がしばらくつづいたと思えば、泉水の下に、階段が現われた。かつて、異端審問官らにたきつけられた村人たちが見つけられなかった、隠し蔵への入り口である。
 ユーベルは石の階段を下りてゆく。
 やがて、行き止まりになった。
 ごつごつとした正面の岩の下側に手を触れ指で何かを探す。
 カチリというかすかな音がした。
 クンと、巨大な、ユーベルの身長とほぼ同じだけの高さがある岩が、後ろに下がり右側にスライドする。
 ほとんど音のたたない、なめらかな動きだった。
 まりあの眠る部屋と同じくらいの広さの部屋だった。
 うずたかく積み上げられた、鉄や木の箱。無造作に壁に立てかけられている刀剣や宝剣。床にこぼれている金貨や銀貨。金銀細工の、食器や装飾品。毛皮。織物。天然石。真珠瑠璃玻璃シャコ珊瑚。象牙。そこにはありとあらゆる宝物があふれていた。
 これだけの品物がありながら、ここには、マリアの匂いは残ってはいない。日常マリアの使っていたドレスや装飾品などは、彼女の部屋に置いてあった。しかし、暴徒どもに奪われてしまったのだ。だから、ここは、ユーベルにとってほとんど意味のない場所だった。
 ほんの少し前までは。
 ユーベルは床の上にぽつんととり置かれている木箱の蓋を開けた。そこには、数種類のマントが放り込まれている。それを全部引きずり出した。そうして別の箱の中から、縫いあがっているドレスとそれと同じ布を使っている靴とを取り出す。
「こんなものだな」
 と、独り語ちるとユーベルは地下室を後にしたのである。
 そうして―――

 同日
 午前五時
 ホテル・メンツハウゼンの厨房で、騒動が持ち上がった。
 朝食の準備に厨房に集まったコックと見習いたちは、呆然と立ち尽くしていた。
 やがて見習いの若者に報告を受けてあたふたと駆けつけてきた支配人もまた、厨房のありさまを見るなりその場に立ち尽くした。
 百名近くの客の要望に応えるために広々と機能的な厨房の中から、鍋やフライパン包丁などの基本的な調理道具一式と、塩胡椒バターなどの調味料がきれいに消えうせているのである。
「誰か、警察に連絡したか?」
 息を吹き返したように、正気に戻った支配人が叫ぶ。
「まだならすぐに電話だ。泥棒に入られたと」
(行方不明に殺人事件、あげくのはてに泥棒だと?! しかも、連日。このホテルは呪われでもしたのか?)

苦虫を噛み潰したような表情で、天井を見つめつづける支配人だった。

 同日
 午前六時
 昴一は居ても立ってもいられなかった。
 勇んでドイツにまで来たものの、だからといって待っているしかない自分がいる。上月はそれでも色々と忙しそうだが、自分は何もすることがない。
 十五世紀以前そのままの木組みの建築様式は、漆喰壁の白にべっこうあめの色に手擦れた木の彫刻も美しい。昴一が泊まることになったホテル・メンツハウゼンの一室もまた、そんな古さびて美しい様式だった。しかし、今の昴一には、そんなことを楽しむ余裕などありはしなかったのだ。
 鬱々と天井を睨みつけ、窓にかかったカーテンの隙間から射し込む街灯の光にも苛々した。
 昴一は眠れなかったと思っているのだが、本当はいつの間にか眠ってしまっていたのだろう。気がつけば夜が明けている。
 朝の六時。
 いつの間に戻ってきたのか、隣のベッドで、上月は眠っている。
 上月を起こさないように着替えた昴一は、書き置きを残してそっと部屋を抜け出した。
 玄関を抜け出し、周囲を見やる。
 整然とした石畳と戦火を免れた古い街並み。朝のひんやりと冷たい空気に、料理の匂いが混じっている。住人たちはもう活動をはじめているのだ。
 もちろん、何か目当てがあるわけではなかった。それでも、昴一はとにかく歩いてみることにしたのだ。

 同日
 午前八時
 肌寒さで眠りを破られることはなかった。その理由は、いつの間にか掛け布団代わりのマントが四枚にもなっていたからだ。
 起きぬけの寝ぼけた頭でぼんやりと毛皮の裏打ちのしてあるマントに包まっているのは、温かで気持ちがよかった。だからまりあは、枕もとに無造作に置かれているドレスに気づくのが遅れたのだ。
 きれいなドレスだった。
(わからないけど、多分、マリアのドレスだよね………)
 ユーベルが今も愛しているマリアの……。
(違うかなぁ。ドレスが残ってるのって変な気がするし。…でも、絶対にないって言い切れないよね。きれい)
 艶々としたなめらかなシルクのドレス。
 いったいどこから持ってきたのだろう。わからない。けれど、まりあにだって一度くらいは裾を引くドレスを着てみたいという、女の子らしい憧れがあったりするのだ。
 だって、きっと、多分、本物のお姫さまのドレスなのだ。
(こんな豪華なドレスが着れるのって、今しかないよね。自分の結婚式だって、きっとこんなに豪華なドレスなんて、着ないだろうし…。白無垢に角隠しなんていう場合もありだろうな)
 着てみたかった。
(それに、着てほしいから、ユーベルだって持ってきたんだよね。きっと、ううん。絶対!!)
 だからまりあは意を決して、しかしその実は恐る恐る袖を通したのである。
 けれど――――
 まりあは恥ずかしいと思いながら、ユーベルの前に立っていた。
 今、まりあは、ドレスを着ている。
 クリーム色っぽい地の色に、ほんのりと淡く緑色がやどっている。そんなシルクのドレスの胸元とスカート部分の裾に、細長い淡水真珠とエメラルドのような緑の石が縫いつけられている。
 どこもきついところはない。まるでシンデレラにでもなったように、揃いの靴もぴったりと合った。けれど………。
「入ってもいいか」
 頃合を見計らっていたらしいユーベルの声が、まりあの耳に届いた。
(入らないでっ!!)
 焦ってしまって、声にならなかった。
 なのに、ユーベルは、返事のないことをいいように解釈して、入ってきたのだ。
 こうして立っているとなんだか、異様に似合わないような気がしてならない。
(わたしとマリアは別人なのに………。わたしって、ばか。…泣きたい)
 ユーベルのガーネットのまなざしが、食い入るように自分に向けられている。
 いたたまれなさに、まりあの両頬は真っ赤に高潮している。瞳がきらきらと輝いているのは、今にも泣き出しそうなためだ。
「マリア………」
 棘を取り除いた一輪のバラを、ユーベルはそっとまりあの左耳の上に挿した。
 飾り気のない短い黒髪に、バラの赤は、とてもよく映えた。
「よく似合っている。きれいだ」
 あまりにも確信に満ちたそのことば。
 自分を通して、同じ名前の他人を見ているユーベル。それが、とても淋しくて、いつしかまりあは、恥ずかしさも居たたまれなさも忘れてその場に立ちつくした。
 まりあは、ユーベルに抱きかかえられて庭に出た。歩くと言い張っても、ヒールに慣れていないまりあの歩きにユーベルが切れたのだ。
「この格好で朝ごはんなんて、ドレス…汚すよ?」
 袖のたっぷりとしたレースを汚すかもしれないことが怖い。
 ユーベルはにこにことしているけれど、まりあは、胃が重いような気がしてならなかった。水をさすかなと思いつつ、言わずになんていられなくて、まりあは、そう言ったのだ。
 けれど、
「替えならある。気にすることなどない」
 と、あいかわらずにこにこと、している。そうしていつものように泉水の縁に腰掛けさせられたまりあは、
(えっ?!)
 と、思った。
 朝食として用意された何かの肉は、葉っぱの上にのっているのじゃない。見覚えのない皿の上で湯気を立てていた。同じく見覚えのない銀製のナイフとフォークも添えられている。
 ドレスみたいにどこかから出してきたのかもしれない。そう思って、ユーベルに促されるまま切り分けた肉をほおばり、今度こそまりあは不安に目を見張ることになった。
 美味しかったのだ。
 久しぶりに感じる塩味だった。
 香辛料もほどよくきいていて、香ばしい。
 この二日間というもの、ユーベルが準備するのは、毎食何かの肉だった。けれど、単に火で炙っただけのもので、味はなかった。味がないというのは正確ではないのかもしれないけれど。――肉そのものの味が、口の中に広がった。しかし、それだけでは美味しいとは思えない。
 あまりに味気なくて。
 塩は最低限必要な調味料なんだと、まりあは知った。
 ユーベルに悪いと思いながら、まりあはただ空腹をいなすためだけに、肉を噛みしめてきたのだ。
 かすかにバターの風味もしているような気がする。
「まりあ。不味いだろうか?」
 心配そうなユーベルの声に首を振りながら、
「ううん。美味しい。びっくりした。でもどうして? 調味料なんてなかったのに」
 まりあの表情が曇っているのに気づくことなく、
「ふっふっふ…もう不味い思いはさせない」
 ユーベルは胸を張る。内に秘めた瞬発力を思わせる鞭のような外見と、時折り見せる無防備な子供っぽさや危うさは、奇妙なほどアンバランスだった。しかしそんな表情をユーベルが持っているから、まりあは彼の前でも気軽に食事ができるようになっていたのだけれど………。
「どこかから、盗って来たの?」
 不安でならなくて。本当なら訊きたくなんかなかったけれど。かといって、訊かずにいることもできなくて、まりあは恐る恐る訊ねたのだ。
「そうだ」
 呆気に取られたようなきょとんとした表情が、妙にあどけない。そんな表情でまりあを見返すユーベルのまなざしには、罪悪感なども感じられなかった。
「ダメッ!! そんなことしちゃ、駄目よっ」
 自分よりも悠に永い時を生きてきたはずなのに、どうして? と、まりあは思った。
 倫理観の欠落とでも言うのだろうか。善悪の判断基準が自分とはズレているような気がしてならない。
 まりあは、思い出していた。
 あれは、一学期の期末テストが終わってすぐ。
 美術室にいたのは、まりあと周子の二人だけだった。もともと美術部は、月一の集会以外は個人の自由活動だから、テスト終了後に部活に出ようなどという物好きは少なかったのだ。
 周子はキャンバスに向かっている。来てはみたものの、そんな周子を横目に、まりあは何をする気にもなれなかった。だから、来る途中図書館で借りて来たばかりの本をぱらぱらとめくっていた。
『ねえ、周子』
 口火を切ったのはまりあだった。
『ん?』
 喉の奥で応じた周子に、
『鬼とか天狗とか山姥とか色々いるんだけど、昔話に出てくる人じゃない存在ってどうして追われるんだろう? そりゃあね、悪いこともするんだけど。でも、そういった存在ばかりじゃないでしょ。九州の伝説だったと思うんだけど、山犬が漁師の妻になったっていうのがあるんだよね。別に悪さをするわけでも、その村に事件がおきるわけでもないのに、追ってきた猟師に殺されるんだよ』
 あの話はどうしても納得できなかったのだ。女の人に化けて漁師の妻になったのは、たしかに山犬の王だったかもしれないけど、人に危害を加えたわけでもないのだ。その話の以前に危害を加えていたんだと言われたら、たしかにそれまでなんだとわかってはいるのだけど。けど、夫を取り殺すつもりもなくて、少なくとも漁師にとっては理想的な妻だったらしい。それなのに――――
『ま〜た、日本漫画昔話かい?』
 振り向きもせずに答える周子に、
『そう。あの番組好きなんだもん。けどね、最後のナレーションで、山犬の王は海の暮らしがしてみたかったのだろう―って、それはないって思ったの』
 再々放送くらいになるだろう民放のアニメ番組をまりあは楽しみにして毎回チェックをしている。
『そのナレーションはとってつけたみたいだけどさ。でも、ねぇ。猟師にしてみれば、漁師が殺されるんじゃないかと思ったんだろ。その話のケースだと、山犬ってことは多分、狼だよな。とにかくむかしの日本人にとって狼は祟らないでくださいって祈るくらいには恐ろしい存在でさ。そんなのが、集団で山の中とかにいるわけだ。獲物の少ない季節だと、人間にとってはライバルだわな。しかも、人間のほうが明らかに弱いわけ。いくら鉄砲持ってたって、時代考えれば、火縄銃かなんかだろうしね。だから、ライバルの頭を潰して
 群れのまとまりを崩すというのは、理に適ってる…んじゃないかい。人間の得る肉が増えるのさ。むかしは獲物が取れるかどうかっていうのは死活問題だろ?! だから、シビアなんだと思うね』
『そーゆーことじゃなくって。わたしが言ってるのは、人じゃないのが追われてしまうってこと』
 周子の説に反論できず、自然まりあのことばは尻窄みになる。
『一言で、人じゃない存在が追われたり殺されたりする理由を言ってやろうか?』
『うん』
『化け物は、怖い!! これに尽きる』
 絵筆の先を布で拭いながら振り向いた周子は、手近の椅子を引き寄せるとどかりと座った。
『怖い…んだよ』
 周子に目を覗き込まれ、まりあは返すことばもない。
『人間を食べるし、天災を起こしたりもする。そうでなくても人間を殺すことそのものを楽しんでるみたいのもいるわけだ。ようするに、人間じゃないもの―異形とされる存在と人間の持つ倫理観が噛み合わないわけだよね。異形は、人間が主食なのもいれば圧倒的に力も強い。いろんな、人間にない能力を持ってもいる。たとえば、心を読まれて嬉しい人間はいないわな』
 それはそうなんだけど………でも、
『倫理観なんて、人間だけの…人間が勝手に作ったものでしょう。時代によって変わったりするっていうし』
『そうだよ。だけど、それがなかったら、人間は安全に暮らせないし、今の生活は、ない。 ひとを傷つけるな、盗むな。近親相姦は、駄目。色々あるわな?! 時代で違うっていうけどさ、でもね、こんなのは、もう、人間のDNAにほとんど刻み込まれてしまってるって思うわけよ。多分、本能に近いくらいにね。だから、遭難した人が人肉喰って生き延びたら騒ぎ立てる。人間の生き延びようっていう本能と、同族を食べるっていうタブーに当人がどれだけ苦しんだかってことを考えるよりも先に、倫理観からくるショックが拒否反応を起こさせるからなんだよ。…多分、だけどね』
 周子は滔々と喋る。
『異形のものは、人間のそういった部分を逆撫でするんだよ。彼らが生き延びるためには、人間を食わなきゃならなかったりする。彼らにとって人間は食料だ。または、人間は力のない弱い生き物だから、好き勝手になぶってもかまわないなんて考えて、遊びで殺してみたり………ね』
『人間だって、人間にするじゃない。戦争とか…殺人とか』
 自分が口火を切ったとはいえ、混乱してきたまりあだった。
『それは、違うよ。それは、同族間の問題だ。
 猫がねずみをいたぶるみたいに、異形が人間をいたぶるっていうのは、昔話じゃ黄金のパターンだよね。大江山の鬼とか…。ま、今とっさに思い出せるのってこれくらいだけど』
『だから、数にまかせて追って殺してもいいの?』
 むきになっている自分を感じながら、つい口にしてしまうのだ。
『それだけのことをしたんだ。勧善懲悪がメインだからね。って、まりあ。所詮フィクションの世界だよん?! きみが人間よかそうじゃないののほうに感情移入する質なのは知ってるけど。深刻になるほどのものじゃないってば。ね』
 周子は話題を終わらせてくれた。たしかに、周子の言うのは正しいだろう。正しいのだろうけれど、まりあは納得ができなかったのだ。どうしてなのか、自分でもわからなかったけれど。
「どうして?」
 まさに今、現実で、ユーベルの答はそんなものだった。
 ――自分を人間ではないと告白したユーベルである。彼にとって人間の倫理観など守るに値するものではないのかもしれない。
 けれど。
「けど……盗んじゃダメ。これは、人間のために言ってるんじゃない。ユーベルのため…………。偉そうなことをって思うかもしれないけど。これからも、ユーベルがわたしのためになにかを盗ったりしつづけたら、いつかユーベルが人間に殺されるかもしれない。そんなとこ、わたしは見たくなんかない」
 わかってもらえるだろうか。
 ドキドキと全身が心臓になったようだった。
 本当ならこんな立派なことを言えるほど、自分はできた人間じゃない。今だってこの不安の理由は、ユーベルが人の物を盗んだからということではないのだ。本音は、そのせいでユーベルが狩られるかもしれないということだった。
 ユーベルが殺されるかもしれない。―そのどうしようもない予感。もしくは空想が、恐ろしくてならなかったのである。
(きっと魔女狩りの夢なんかを見るから…影響されたんだ)
 最初に見た時から、うつらうつらすると必ず見てしまう夢。
 いつも自分は狩りたてられる魔女で、拷問を受けるのだ。けれど、いつも夢の中の自分は、自分のことよりもユーベルのことを心配している。
 考え込むようにユーベルが小首を傾げている。
 そのさまは、ボリスを彷彿とさせた。
 しかし、やがてユーベルの口から出たのは、
「人間ごときに殺されるなどとは思わない」
 そんな剛いことばだった。それは、まりあの肝を冷やすのに充分のことばで、
「ダメッ!」
 と、思わず叫んでいた。
「なぜ? これまでオレが殺してきたのは、百や二百ではない。財宝を狙って何千というものどもがやってきた。それらをことごとく屠ったのは、誰でもない。オレだ」
「それでもっ! それでも、ダメ。人間が集まれば恐ろしいもの。この国にだって、魔女狩りなんて恐ろしい歴史があった。魔女だって決めつけられて、突き上げられて、たくさんの人が殺されたわ。その人たちは抵抗するにもできなくて、どうにもならなかったかもしれない。けれど、圧倒的な数に勝てるのはそれを上まわる数だけだもの。人間が一度に何百何千って集まってあなたを取り囲んだら、ユーベルだって逃げられないかもしれない」
 掻き口説くように訴えるまりあのまなざしは、これ以上ないくらい真摯なものだった。
「だから、もうしないで。もし何か人間の使っているものが要るっていうのなら、わたしに教えて。………お金の換わりになるもの持っているから。それで、買うの。足りなければ、カードだってあるし。……人間のルールで、一緒に買い物に行こう?!」
 自分は何を言っているんだろう。何をしているのだろう。まりあは思う。
 これでは、帰るどころではない。
 もしかして、自分は、ここに残ることを当然のように受け容れているのではないだろうか。
 ユーベルとふたりきりで、この霧に囲まれた廃墟で、暮らす。
 それは決して不快なことではないように思えた。
 ユーベルと一緒にいることは、今ではむしろ、心地好いと思えるのだった。けれど、それがあまりにも現実離れしているのだということもまた、まりあは自覚していたのである。
「一緒…に?」
 考えてもみなかったというように、ユーベルが見返してくる。
「そう。ユーベルが一緒だったら、わたしがここにいるのも同じでしょ」
 これだったら妥協してくれるのではないか―と、思った。なのに、
「………駄目だっ!!」
 肩を掴みユーベルが叫ぶ。
「ここから出てはいけない。誰にもあなたを…マリアを、傷つけられたくはない! …っ」
 掴まれた肩の痛みに怯みそうになる。それでも、
「ユーベル………だれもわたしを傷つけたりはしない」
 説得したかったのだ。
 けれど。
「オレは、あなたを、マリアを守りたい。マリアを今度こそ、だれにも奪われたくない」
 過去に囚われているガーネットのまなざしが、まりあの黒目がちの瞳を覗き込んだ。

to be continued
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