就眠儀式〜しゅうみんぎしき〜



 あれは、一年前の初秋のことだった。
   まだ、十三に過ぎなかったオレは、殿の側小姓を勤めている河部さまにつき従い天守閣の最上階につづく階(きざはし)を上っていた。
   一段一段の幅が広い階を上るのは、片足のないオレには苦痛だった。が、音を上げるわけにもいかない。オレのような奴婢(ぬひ)はいくらでも代わりがきく。階を上ることが辛いからと、そんなことで、命令に逆らったら、下手をすれば手打ち、上手くしても放逐だろう。そんなことになったら、オレのようなヤツはすぐに死んでしまうにちがいない。
   城の天主の最上階。そこでは、竜が飼われている。まことしやかに囁かれる噂を知ってはいた。まさかその噂の真偽を知る破目になるだなどと、オレはその日まで考えもしなかった。
   それまでの世話係が死んだせいで、それが自分の仕事になるだなどと、思いだにしなかったことである。



 小さな明かり取りがあるだけの、寒々しい部屋の中で、鎖につながれただ生かされているだけの存在。それは、先代の殿が、隣国を襲い、そうして奪い取った、竜女(りゅうじょ)である。
 


 はじめて見た時の衝撃は、この上ないものだった。
  「よいな。竜女の面倒をみるのが、そのほうの役目だ」
   手順を教えて、河部さまは天主を降りていった。
   魚油の灯がかすかな異臭を漂わせながら、天主の闇をぼんやりと照らしていた。
   細くたよりなげな手首と右の足首に鉄の枷がかけられていると気づいたのは、竜女をもっとよく見ようと近づいた時だった。
   太い、オレの親指ほどもあるだろう鎖が、壁際の床に続いている。
   ああ――。
   その時、悟った。オレは、本当は、竜女の監視なのだ―――と。
 

 竜女は白かった。伏せられた長い睫毛の影にかくされていた、ただ光を弾くだけの瞳が、血玉と呼ばれる珊瑚にも似た紅を宿している以外は、なにからなにまで白い、存在だった。
   五年近く前の隣国との戦の後、親兄弟と死に別れ路頭に迷っていたオレたち焼け出された子供は、城の下働きとして小さな小屋に集められた。城の雑用にくたくたになるまでこき使われるためにではあった。要は態の良い奴婢にすぎなかったが、野垂れ死ぬことだけは避けられたのだ。幸いだというべきなのだったろう。
   天主で竜女の監視を務めるのは、下級とはいえ武士の役目だったから、この降って沸いたような抜擢に、奴婢仲間からの羨望のまなざしが痛かった。しかし、この抜擢の原因は、片足がないということもあったろうが、なによりこの役を引き受けようとするものが他にはいなかったからにちがいないのだ。
   なぜなら、以前の係には係累がいなかった。それに、天主はむかしから魔の棲み家だとの言い伝えもある。そこで竜を飼うだなどと、意外に縁起を担ぐ武士達にとっては、恐れ多いことだった。だから、天主の下の張り番ならばともかく、そこから中へは、用がないかぎり入りたがらない。
 

 竜女が口にするのは、三日に一度の清水と花の蜜を少しだけ。賄所(まかないどころ)で整えられるそれらを天主へと運び、意識のない竜女に与える。そうして、毎日、竜女を清める。
   仕事とすれば、楽な部類にはいっただろう。杖に頼っての階の上り下りが苦痛だとはいえ、それまでやっていた厩舎の係よりも、よほど苦労はない。
   天主に詰めるため、仲間たちに会えないことが淋しかったが、そんなことは準備されていた寝具を見たとたん、どこかに飛んで消えた。
   竜女の繋がれているその同じ板敷きの部屋を丈高い衝立で区切っただけの空間は、おそらくは以前の係が使っていたのだろう、ささやかな個室だった。そこには、これまで使ったことも見たこともなかった、綿のたっぷりと入ったかいまきが用意されていて、格段の待遇の差に良い気分になったのだった。
   竜女を清めるためには、もちろん、着物を脱がさなければならない。仕事だからと割り切ろうとしたが、戸惑いと羞恥を感じずにはいられなかった。
   オレは、仕事なのだと自分に言い聞かせながら、竜女の帯を解いたのだ。
   帯を解いたことで袷(あわせ)がはらりと開き、とっさに目を閉じていた。
   恐る恐る瞼を開け、生まれてはじめて見た妙齢の女のからだは、白くなめらかだった。けれど血の気のない肌からは、生々しさは少しも感じられなかった。だからこそ、壺などを拭うような感覚で接することができたのだ。竜女の背中いっぱいに彫られていた、不思議な模様が、ひときわその感覚を強めていた。
   喋るでなく、動くでもない。ただ息をしているだけの人形めいた存在に、それでも、拾った犬や猫に対するように、いつしか、愛着を抱くようになっていたのだ。
   それには、三日もあれば、充分だった。
   命令だからということ以上に、世にも珍しい存在に対する奇妙な感情のためにこそ、竜女を丁寧に拭い清めた。
 

 竜女が何のためにここに繋がれているのか、考えもしなかった。
 
  
 竜女とただふたりきり、天主での時はゆるやかに流れてゆく。それは、いつしか、いつまでもこのままなのだろうと思い込んでしまうほどに、変化のない日々の連なりだった。
 

 あの日、殿が先触れと共に天主をおとなうまで―――――
 

 竜女の世話をし始めてから八日目の昼過ぎだった。突然、河部さまが天主に上ってきた。
   自分よりも四才年上の十七才、眉目秀麗な河部さまは、開口一番、
  「殿のおなりである。竜女は清めておろうな」
   凛と張りのある声で問われ、
   オレは平伏し、諾――と、答えていた。
   河部さまは、殿の覚えめでたい方だった。
  「そのほうは、隅に控えておるように。ここで見たものは、言うまでもないことだが、他言無用ぞ」
   強張った声に、承知するよりなかった。
   もちろんオレに、承諾以外の選択肢などありはしなかったが。
   にじり、部屋の角に下がり控える。
   何かが起きる。河部さまの表情や声音に、それがあまりよいことではないだろうという予感がある。もやもやと、心臓が重苦しい鼓動を刻む。
   どれほどの時が過ぎたろう。殿が現れた。
   しかし、その姿は、どうしたのだろう。
   殿といえば威風堂々とした、覇者だ。近隣の同盟者からは頼りにされると同時に、殿の心ひとつで突然起きるかもしれない同盟の破棄を心から怖れられてもいる。
   なのに、戦慣れした眼の鋭さは、何かに憑りつかれた者の異常な光を宿している。青褪めこけた頬。よろぼい歩くさまは、たしかに今朝までの殿とは違っていた。
  「とのっ」
   河部さまが殿を支えようと手を述べるが、
  「よい」
   拒絶の声すら力ない。
   河部さまが、懐から取り出した鍵で、竜女の手首の枷を解いた。そうして、背中にまわした手首に、外したばかりの枷をまきつけた。
   カチリと、心に痛い音が、響く。
   河部さまが、竜女の背を支え、力なくのけぞる竜女の襟をくつろげた。
   白く人形めいた胸元が、殿の目の前に、供物ででもあるかのように、捧げられている。
   よろぼいあるく殿が、わずか数刻にして痩せさらばえた皺深い腕が、竜女の肩を握りしめた。
   竜女は、目覚めない。
   逃げることも、抗うことさえも、ない。
   ただ、のけぞったまま、そのか細い肩と首の境を晒していた。
   つぅ……と、殿の口から、唾液が糸を引いて流れ落ちる。竜女の胸のふくらみをつたい、ぬらりとした痕を残した。
 

 殿が口を大きく開いた。
   そうして…………………
   殿の尖った糸切り歯が、竜女の首筋を食い破ったその時、いつも軽く閉ざされている薄い瞼が、色の褪せているくちびるが、大きく見開かれた。悲鳴はなく、ただ小刻みに繰り返される痙攣が、その苦痛のほどを物語っているようだった。
 

 年の頃なら十六才か十七才ほどに見える竜女に襲い掛かる殿の姿は、人ならざる何か異質な存在と見えた。
   竜女のただでさえ青褪めている肌から、血の気が引いてゆく。
   噛み破られた箇所から、血を啜る濡れた音が、静まりかえった天主に、いつまでも響いていた。
   殿と河部さまの足音が遠ざかる。
   ぼんやりと頭の片隅でそれを認識しながら、オレははっきりと知った。
   誰も、竜女の世話を焼きたがらない。その理由を。
   誰も、人が変わったような殿の、おぞましいさまを見たくはないからなのだろう。
   どれくらいの時が流れたのか。
  「たつみ。おいっ」
   肩を揺すられ、気がつけば、薄暗がりの中、奴婢仲間の寛太が目の前に立っていた。
  「これ。賄所の婆あがここに運べって」
   差し出されたのは、木の盆にのった水と蜜、それにどうやらオレの夕飯だった。
  「おまえ案外いいもん食ってんな」
   やっぱり天主で働くってーのは出世ってことなんだな。そんな呟きに、
  「食うか?」
   差し出していた。
  「へ?」
   きょとんとした寛太だったが、すぐに握り飯を掴み口に運んだ。
   食欲がなかった。悪夢のような光景とはいえ、幼いころに体験した戦火のほうが、よほど恐ろしいものだった。けれど、目の当たりにした出来事は、たしかにオレの胸を詰まらせていたのだ。
   竜女に憐憫を感じるようになってきたのは、このことがあってからだった。
   そう、憐れみ――だった。
   かわいそうだと思ったのだ。
   生きているのだから。
   たとえ、意識が戻らないのだとはしても、痛みは感じるのだ。殿に血肉を啜られている間、どんなに恐ろしいだろう。
   定期的に訪れる、吸血の儀式。それまでの痩せさらばえたさまが何かの冗談のように、いつもの姿を取り戻した殿が、河部さまを従えて天主を降りてゆく。
   その後の竜女のようすは、紙のような肌でかさかさに乾いているようだった。
   首からしたたる血は、最後の一滴まできれいに絹に染み込ませて河部さまが懐にしのばせる。
   投げ出されたように板の間に倒れている竜女の首にぱっくりと口を開けた傷口は、ぬらりと光を弾いているが、清水で拭うと嘘のように元に戻った。そうした後で、竜女に清水と蜜とを与える。
   なぜそれだけで竜女が生きていられるのか、傷が治ってしまうのか、不思議でならなかった。けれど、わかるのは、そういうものなのだということだけで。オレは深く考えることはやめにした。
   からだを清め、竜女を横たえる。それで、オレの一日の仕事は終わりだった。自分の部屋で横になったオレの耳には、苦痛の名残りのような竜女の荒い息だけが、かすかにいつまでも聞こえていた。
 

 あちらこちらでくすぶっている戦の火種が燃え上がるたび、殿は兵を率いて出陣してゆく。戦はいつまでかかるかわからない。殿が竜女の血肉を次に必要とする時までに終わればいいが、そうでない場間とてある。だから、戦のたびに、竜女は天主から連れ出された。殿にとって必要不可欠な兵糧として。そうして、オレもまた、その世話係として参加させられたのだ。
 

 寒さはしだいに厳しくなっていった。
   天主は、暗く寒い。
   初秋の頃は心地好いくらいだったが、冬ともなればしんしんとした冷え込みが骨まで染みる。差し入れされた小さな火鉢ひとつでは、いくら窓を閉めたとしてもぬくもりすらしない。かいまきを着こんでいても、顔が寒かった。
   気がつけば、竜女も震えていた。
   白い肌が透けるほどに青褪めて、見ているだけで寒々しかったのだ。
   ここ数ヶ月世話をしてきたことで、病気も怪我も竜女には関係ないことがわかっていた。しかし、竜女だとて、寒さや痛みを感じているのだ。
   声のない悲鳴。
   頬を流れる、涙。
   ぱっくりと噛み裂かれてぬらりと光る、傷口。
   首筋をつたう、血の鮮やかさ。
   竜女のからだの震え。
   それらがあまりにも痛々しくて、オレは思ってしまったのだ。
   殿のおとないがなければどんなにいいだろう。縛めを解くことが出来れば、ここから逃がすことが出来れば、どんなにかいいだろう。――――それらは、オレの心の奥底で、まるで燠火のようにちろちろと燃えつづけていた。
   もちろん、鎖を解いたところで、竜女が逃げられるわけもない。誰かが、竜女と一緒にいなければ………。
   オレ? 
   オレが、竜女を連れて、逃げる?
   心臓が、とくりとひとつ、不吉な鼓動を刻んだ。
 意識がない竜女を、片足のないオレが運ぶ? 冗談にしても、不可能だ。第一、逃げてどこに行く? あてのない放浪の毎日では、竜女をつれて逃げきれるものではないだろう。
   だから、それらは、あくまでも実現することのない、夢に過ぎなかったのだ。
   おそらく、その時、既にオレは、竜女のことを好きになっていたのだろう。
   竜女のためなら、どんなことでもしてやりたい。
 そう思うくらいには、真摯な…………思いだった。
   トクトクと心臓が鳴る。四つん這いになって見下ろした竜女の顔は、作り物のようだ。
   そっと頬に触れてみた。
  「冷たい………」
   小刻みなからだの震えのはかなさに、氷のように冷えきっている頬に、心が痛んだ。
  「そうだ」
   取って来たかいまきに竜女と一緒にくるまってみる。ひややかな竜女のからだに、骨の芯まで凍えるような心地だった。
   ゆるやかすぎる鼓動が聞こえてくる。耳を傾けている内に少しずつ眠くなってきた。いつしかオレは、眠りに引き込まれていたのだ。
  (あったかい………)
   暖かさに導かれるように、ぼんやりと目覚めると、目の前に赤が広がっていた。海から出され磨かれた、血色の珊瑚のような、赤。
   それは、竜女の瞳だった。いつもは密な白い睫毛の奥に隠されているぼんやりとしたまなざしが、オレに向けられていた。
  「りゅう………じょ?」
   オレの声は擦れていただろう。なぜなら、竜女の瞳の輝きが、いつもとは違っていたからだ。
   いつもは、睫毛の隙間からかすかに垣間見えるだけ。ただ鈍い光を宿すだけの一対の血玉めいていたものが、大きく見開かれている。
   冬の曙光が、雨戸の隙間からかすかに入り込んでいた。
  (起きなきゃな)
   寝過ごした。
   今日は殿が来る日ではない。指折り数えてほっと安堵の溜め息を吐く。もっとも、誰も来ないとはいえ、寝過ごすのはほめられたことではない。
  「起き、るから………」
   聞こえているかどうかわからなかったが、黙ったまま起きるのはどうも悪い気がしたのだ。
   オレが起きて、窓を開けた後だった。じゃらりと鎖のたてる音がした。
   慌てて振り返ると、竜女が上半身を壁にもたせかけて、オレを見ていた。
   かすかな口もとのひきつりは、微笑だった。
   なぜか、わかった。
   そう、わかったのだ。そうして、わかったことで、オレの心ははずんだ。これ以上ないくらいに、はずんだ。
   殿が来る日まで、まだしばらくの間があった。オレにとって、楽しい毎日だった。
   なにがきっかけだったのかは、知らない。喋れないのだと思っていた彼女が、かすれた声で、小さくひとことかふたこと呟くようになった。たどたどしいことばで竜女が喋る。ただそれだけのことが、とても嬉しいことのように思えたのだ。
   歩くことを忘れた足は、萎えているらしく立ち上がることすら出来なかった。それは、手も同様で、鎖の重さに、持ち上げることさえも出来ないようだった。
   板壁に背もたれた竜女の口もとへと、清水や蜜を運ぶ。以前であれば無理矢理こじ開けた口の中に、少しずつ流し込まなければならなかった。竜女が咽かえらないように、注意して流し込む。
   今は、鳥の雛が餌を待つように口を開けてくれる。赤い舌が、真珠めいた白い歯が、ちらちらと見えるさまに、なぜだか、心が騒いでならなかった。
   とろりと甘い蜜を竜女は好んでいた。それ以上に、清水が。清水と蜜とが、竜女にとってはかかせないもののようだった。
 

「またかい?」
   賄所の女が厭な顔をしてオレを睨んだ。
  「おまえが自分で舐めてんじゃないだろうね」
  「そんなことしませんよ」
  「どうだか。ここの管理をしてる人は結構細かいんだよ。………から河部さまに報告がいったりしたら、下手すりゃあたしにまで類が及ぶんだからね。あたしが誰かに蜜を横流ししてるなんて思われちゃたまらないよ。まあ、ないっていうんなら、いつもより多めに入れといてやるけどさ。これで今日の分はおしまいだよ。とりあえずそれでまかないな。重いよ、運べるかい」
   ぶちぶちと文句を言いながら、それでもたっぷりと蜜をいれた壺をくれた。
   口の悪さに反して、気のいい女なのだ。だから、オレも屈託なく笑って礼が言える。
  「これくらい運べるって。ありがとう」
 

「………………」
  「自分で?」
   覚束ない言葉を要約すると、自分で食べると伝えたいらしかった。
   オレは途惑った。
   萎えた腕は、ほんの数日前まで鎖の重さにも耐えられなかったというのに、自分で食べることなど出来はしないだろう。
   そう言うと、大丈夫だ――と、かすれた声でささやいた。
   こうして竜女と喋れる不思議に、胸がときめく。オレは、舞い上がっていたのだ。
   今日が例の日だということを忘れていた。
   竜女が自分自身で差し出した掌の上に、皿に取り分けた蜂蜜をのせる。それだけで震える小さな白い手が、不安だった。皿と反対側の手に木匙を握らせる。
  「平気?」
  「………」
   少しだけ赤味を増してきたように見えるくちびるが、動く。
   木匙が、蜜を掬う。粘り気のある透き通った液体が、とろりと細く糸を引く。
   舌先がのぞき、木匙の上に溜まった蜜をちろりと舐める。
   オレを見ていた瞳が、細く眇められ、会心の笑みが形作られてゆく。
   とても、綺麗な、笑顔だった。
   しかし、オレが見ている目の前で、突然その笑みは凝りついたのだ。
  「これは!」
   聞こえたのは、河部さまの驚きにひきつった声だった。
   遅らばせながら殿が来る日だったと気づいて思わず振り返ったオレは、呆然と立ち尽くしている河部さまを見上げる格好になった。
  「どうした」
   かすれた殿の声が、カチカチとぶつかり合う鎖のたてる音が、耳を打つ。
  「殿……竜女が…………」
   ひきつったような河部さまの声に、
  「死んだのか」
   苦痛を堪えているような殿の声がかぶさった。
  「い、いいえ」
  「ならば、驚くこともあるまい」
   オレは、動けなかった。
   殿がオレを振り払う。その場に倒れて、はじめて竜女を助けなければという意識が芽生えてきた。
  「とのさまっ」
   思わず手をかけようとして、
  「何をするか。無礼者!」
   容赦のない河部さまの一喝と共に扇でよこざまに払われた。
   痛みに霞む視界に、竜女の救いを求めるようにさし伸ばされた白い腕が、いつまでも脳裏に刻みこまれた。
 

 竜女の意識がなかった理由が、わかってしまった。
   そう。
   竜女は、怯えていたのだ。
   いつからかは、知らない。ただ、捕えられて、繋がれて、血肉を喰らわれつづける。その苦痛に堪えきれず、竜女は唯一取れる手段を選んだのだ。何も感じなければ、怖くない。だから、おそらくは、自分自身で意識を閉ざしたのだろう。
   それを、卑怯だと、弱虫だと、謗れるものなどいないだろう。
   竜女は、モノとしてしかあつかわれていない。すべてを縛られている。他にどんな手段があるというのだろう。
   逃げられるというなら、疾うに逃げていただろう。そう簡単に、ひとは歩けなくならない。そんなに簡単に、手を使うことが出来ないようになりはしない。手や足の萎えが、竜女が閉ざされつづけてきた時を、オレに垣間見せるのだ。
   震える竜女を抱きしめて眠りにつく。
   いつしかそれが、オレの就眠儀式になっていた。


「今から、あんたのことを、朱花(しゅか)と呼ぶことにするよ」
   それは、五年近く前の戦でオレを庇って死んだ姉の名前、朱(あけ)からだ。花の字を加えたのは、なぜだろう。姉のおかげで、オレは片足を失くすだけで済んだ。忘れないように、大切に、覚えていた名前だった。どうして、その大切な名前を、竜女につけたのか。
   竜女などと呼ぶのでは、まるでモノのようだ。竜女という、人ならざる、モノ。ずっとそう呼ばれてきた竜女――朱花にとっては、苦痛でしかないだろう。だから、名前をつけようと考えたのだ。
   オレの考えは、外れてはいなかったのだろう。
   竜女、いや、朱花は最初オレが何を言ったのか、すぐにはわからないようだった。しかし、ゆるゆると、朱花の表情が泣きそうなものに変わってゆく。
   血玉の瞳が、涙に潤む。
   ガチャリ―――――
   朱花が手を伸ばすのと同時に、両手の枷を繋いでいる鎖が音をたてた。
 

 朱花の世話をするようになって、半年が過ぎた。
 

 名前をつけたのは、失敗だったのかもしれない。
 なぜなら、ふたりの間だけで通じる名前をつけたことで、彼女をひととしか見れなくなってしまったからだ。
   朱花は竜女などではない。そんな認識が心の底にまで染みとおっていた。
   彼女をひととして見るようになったことで、彼女に対する愛情が、変化してしまったのだ。
   ――――――そう。
   オレは、朱花を愛してしまった。
   殿の持ち物に愛情を感じて、どうなるというのだろう。待っているのは、おそらくは、破滅だ。
   殿が朱花の血肉を啜るさまを見つづけることが苦痛でならなくなっていた。
   堪えられない。
   愛する女が、あんな目に合わされるのだ。
   血を啜られ、肉を喰らわれる。いつまでもつづけられるその繰り返し。
   声が出るようになったことで、せりあがる朱花の悲鳴が、耳に、心に、痛い。
   逃がしてやりたい。
   心の底から、そう思う。
   けれど、単なる奴婢でしかないオレに何が出来るだろう。
   殿の行為は酷くなるばかりだった。
   オレは考えた。
   頭が痛くなるくらい、必死で考えつづけた。
   そうして、ひとつの案が浮かんだ。
 

※ ※ ※
 

 それもまた、ありふれたこぜりあいだった。
   血の匂いが充満した戦場は、いつも朱花を怯えさせる。
   何も語ることはないが、それだけ酷い何かが過去にあったのだろう。
   朱花は歳をとらない。それに、死ぬこともない。幾度も朱花を閉ざす相手は変わってきたことだろう。
   十ヶ月近くを朱花と共にいて、オレはそれを確信していた。
 

 戦の間、オレ以外には朱花に裂く人員などない。殿だとてオレが裏切るとは考えもしなかったにちがいない。
   一介の奴婢が、殿を裏切る。それは、ありえざることであったろうし、あってはならないことでもあったろう。
   裏切りが発覚しようものなら、単なる奴婢を殺すのに、誰が異を唱えるだろう。
   奴婢が主人を裏切らないのは、切実ないのちの危機にいつも晒されているからだ。
   オレが朱花を連れて逃げたのは、だから、大きな賭けだった。
   まずは、朱花の足が立つようにすることからはじめた。そうでなければ、オレ独りで朱花を逃がすことは出来ない。幸い天主に人が来ることは、殿の定期的な訪れ以外は、ほとんどなかった。朱花が歩けるようになったことは、誰にも気づかれないようにしなければならなかった。
   あとは、どうにかして、朱花の縛めを解くことだ。
   鍵が要る。
   鍵を持っているのは、おそらくは河部さまだけ。いや、殿も持っているのかもしれない。いつも鍵を使うのは河部さまだったから、持っているのなら、殿の鍵を狙ったほうが得策だろう。しかし、どうすればあるかどうかもわからない鍵を殿から奪うことが出来るだろう。
   オレが考え込んでいる間に、殿の身辺に変化があった。それが、オレたちに味方した。
   殿が奥方をもらわれたのだ。
   これまで殿は正妻を持たなかった。それが、今度の同盟に当たって、どこかの国主の娘をもらうのだという。
   オレには、関係のないことだった。だから、その話をオレが知ったのは、当日のことだった。蜜を取りに行った賄所はてんやわんやだったのだ。
   いつも蜜をくれる小母さんが忙しなさそうにあちらこちらと駆けずり回りながら教えてくれたのだ。
   そうして、一月が過ぎた。
   いつものように朱花が鎖を引きずりながら足を慣らしていると、下が騒がしくなった。
   なんだろう?
   顔を見合わせたオレたちだったが、朱花が歩けることだけは、どうしても知られるわけにはいかない。
   慌てて、朱花に定位置に戻るように目だけで合図して、オレは何事が起きているのか確かめるために、階を下りようと落とし戸を持ち上げた。
  「奥方さま。なりませぬ。そちらは、たとえ奥方さまであろうと」
   天主の見張りの声が聞こえてくるのにかぶさって、女のものらしい金切り声が響いてくる。
  「朱花、なにがあっても動くな」
   緊張した表情で、朱花が頷く。
   やがて、足音も騒がしく現れたのは、見たこともないような豪華な衣装を身にまとった三人の女だった。
 ぐるりと周囲を見渡した歳若い女が、朱花に近づいてゆく。
   朱花の胸倉を掴み、乱暴に上体を起こさせる。
   生きた心地がしなかった。
   手が使えるようになっていることまでは、殿も知っている。
  「おまえが、わが殿の愛人なのだな」
   あまりの勘違いに呆然となった。
  「殿がここへと足繁く通われていることは、知っている」
   つづけられる奥方の言葉に、何をどうするべきか、オレはわからなくなっていた。
   どこをどう曲解すればそんな風に思うのだろう。朱花の手足に巻かれている枷が、奥方には見えないのだろうか。
  「そんな、逃れられぬようにと枷までかけられておるとは。よほどのご執心なのだな」
   朱花が首を振るのが見える。途惑っているのだろう。
  「喋れぬのか?」
  「………」
  「聞こえぬわ。もっと大きな声で答えるがよい。そなたは、わが殿を思うておるのか」
   もう一度、朱花が首を横に振る。
  「喋りや!」
   苛立たしげな声を最後に、奥方は沈黙した。しかし、それは、わずかな間に過ぎず、 「わらわがそなたをここから出してやろう」
   奥方は、三歩ほど離れてつき従っている女達に何事かを合図した。
   独りが朱花の傍らへと進んでしゃがみこみ、何かを懐から取り出した。
   そうして、怯えている朱花の手を取り上げ、枷の鍵穴へそれを刺し込んだ。
   カチリと硬い音がして、枷の鍵が解けたことがわかった。
   これは、好機かもしれない。
   奥方のすることだ。オレ風情が逆らえるわけもない。
   ドキドキしながら、朱花の縛めがすべて解かれるのをオレは待ち侘びた。
   しかし、オレの期待は、殿の乱入によって、打ち砕かれたのだった。
   殿が奥方の頬を殴る音に、その場が凍りつく。
   呆気ないほど簡単におとなしくなった奥方を従えて、殿が天主を降りてゆく。つき従う二人の女。
   静まりかえった天主に、希望を打ち砕かれたオレと朱花だけが取り残された。
   しかし、幸運があった。
  「たつみ………」
   オレの名を呼ぶ朱花の声に振り返れば、朱花が何かを手に持っている。
   それは、鍵だった。
   半ば奪い取るように鍵を朱花から受け取ったオレは、それをどこに隠すべきか、必死になって考えた。あまりゆっくりしていると、鍵がないことに殿が気づくかもしれない。
   結局、オレはそれを、蜂蜜の壺の中に沈めたのだ。
   殿は、鍵には気づかなかった。
   こうして、今、オレの手の中にあるのは、間違いなくあの日、奥方が持ち出した鍵である。
  「朱花。手を出して」
   上手くいった。
   天主の下の階から少しずつ盗み出しておいた砂金の粒もある。これだけあれば、当座は暮らしてゆける。遠くに逃げることもできるだろう。いけないことだとわかっていても、オレと朱花では、金がないとどうにもならない。野垂れ死にでもして、朱花がひとり取り残されたらどうするのだ。
   そうして、オレたちは、戦のどさくさに紛れて逃げ出したのである。
 

 一月が過ぎ二月が過ぎようとしていた。
   山を幾つ越えただろう。
   地の果てを旅しているような気がした。
   追っ手がかかっているのは知っていた。
   何度か遭遇しかけて、そのたびかろうじて見つからずに済んでいた。
   いつまで追ってくるだろう。
   それがわからない。
   だから、気が抜けなかった。
   朱花は、なきごとひとつ言わない。
   傷ついた足はその日のうちに治ってしまう。そうして、また、傷つくのだ。
   逃げ出した時こそ初春だったから、時折りの雪や肌寒さにまいりかけたりもした。しかし、今は初夏である。野宿でも充分夜を越せる。
   火を焚かなくても、不思議と獣は寄ってこなかった。
   山の中でも川のほとりでも、食べ物に困ることはなかった。
   山賊を警戒したが、出くわすことはなかった。
   そうして、町についたのだ。
   どこか知らない町だった。
   ひとの多い、活気あふれる町。オレは、町はずれの林の中に、ささやかな庵を建てた。朱花も手伝った。片足のないオレの変わりに、必死になって木材を集めてくれた。庵の周囲に畑を作った。
   しかし、幸運はそこまでだった。
   庵で暮らせるようになって、十日目くらいだったろうか。
 

 突然の襲撃に逃げるのが遅れたのだ。朱花の手を取って外に飛び出したものの、
  「たつみ。それをこちらへ返してもらおう。さすれば、こたびのこと罪には問わぬ―――と、殿は仰っておられる。おぬしのこれまでの忠誠を鑑みられてのありがたきお言葉ではないか」
   明け方の白い靄の中、白刃に取り囲まれているまさに今となっても、オレは後悔していない。
   ――そう。殿の財宝を奪ったと、恩を仇で返した不忠者と謗られようと、断罪されようと、かまわない。
「ニゲテ」
   耳元でささやかれた、かすれた声―――――それだけで、もう、いつ死んでも悔いはないと思えた。
   陽に当たらなかった歳月の長さを偲ばせるような、過ぎるほどに、白い頬。長い髪さえも、美人の条件である射干玉色(ぬばたまいろ)とはかけ離れているけれど。整った容貌の中の一対の宝玉すら、あまりにも人とはかけ離れてはいたけれど、あんな、惨い扱いを受けていていいはずがない。
   それに、なによりも、オレは、朱花を愛しているのだ。
   愛する女を守らずに、男だなどと言えはしない。
 けれど、
  「ニゲテ」
   繰り返されるたどたどしい朱花のことばに、死ねない―――と思った。
   先までとは正反対の思いが湧きあがってくる。
   そう。この、自分の身を守る術すら持っていない、白くはかないものを残して死ねない。
   殿に囚われていたころの、感情のない血色のまなざし。あの悲しい瞳。
   あの瞳に感情を呼び覚ましたのは、ほかならぬオレだったのだから。
   死ぬわけにはゆかない。
   しかし、オレに何が出来るだろうう。
   ぐるりとオレたちを取り囲む、白刃。
   ざわりと緊張が撓んだ。
   ガチャリと、記憶にあるような硬い音が耳を射る。
   見開いた視界に、黒地に金象嵌のきらびやかな甲冑姿の人物が現われた。
  「っ!」
   それが誰か、わかった。
   兜の下にねつい光を宿した瞳。
   一歩進むたびに、甲冑を鳴らし大きく揺らぐ。
   白い靄の中の悪鬼めいた姿。
   それは、まぎれもなく、殿―――だった。
  「儂ノ物ヲ返スノダ」
   軋みひび割れた声と、ギクシャクと伸ばされる、篭手につつまれた腕。
   背筋が、逆毛立つ。
   これは、なんだろう。紛れもなく殿なのに、違和感がある。
   ひしひしと、伝わってくる、不気味ななにか。
   こんなものに、朱花をわたすわけにはゆかない。
 背中ごしに、朱花の震えが伝わってくる。
   ほのかな、体温。
   オレを無視して朱花に掴みかかろうとする殿を、渾身の力で突き飛ばしていた。
  「ひっ」
   刹那、オレは、手に感じた感触に、悲鳴をあげていた。
   ぐにゃり、ふにゃり、そんな、奇妙な手触りを、甲冑の奥に感じたような気がしたのだ。
   音をたて脆くも倒れた殿に、白刃を手にしたままで部下たちが駆け寄る。
   しかし、なぜなのか、彼らは立ち尽くしたまま、殿に手を化そうとはしない。
   殿がもがけばもがくだけ、じわりと彼らが後退さる。
  「なにをしている」
   オレたちの背後に回り込んでいた残りの武士が、声をかけた。
   返事はない。
   焦れた武士が、仲間の元へ一人また一人と駆けてゆく。そうして、駆けつけたものもまた、その場に強張りつき、一瞬の後後退さるのだ。
   気がつけば、ついに、オレたちの背後に残る武士は、一人となった。
   今しかないと思った。しかし、逃げようとした足を払われ、オレはその場に無様に転んだ。
  「たつみっ」
   朱花を男が拘束する。
   朱花が、引きずられてゆく。
   男の足に縋りついたオレの右手を、男の刀が貫いた。
   熱と痛みが、脳天まで駆け抜ける。
   その場でうずくまりやりすごそうとしたが、貫かれた灼熱の痛みはやわらがない。
   しかし、朱花が取り返される。
   取り返されてしまう。
   元のように、天主に閉ざされるのか。いや、もっと酷い目に合うかもしれない。
   必死に杖に手を伸ばした。どうにか杖に縋り立ち上がったオレは、男たちを掻き退けた。
   死を覚悟していた。しかし、不思議と、どこからも、抵抗はされなかった。
  「朱花っ」
   それどころか、朱花を奪い取ることすら、容易だったのだ。
   抱きしめた。ほのかな朱花のぬくもりが、全身に染みわたる。かすかに、手の痛みが薄れたような錯覚すらあった。
   あまりの呆気なさに疑問を感じたのは、どれくらい後のことだったろう。
   男たちを見上げれば、愕然とした表情の中に、ぞっとするような恐怖をたたえている。
   そうして、男達の視線は、オレの後ろ、地面に向けられていた。
   そこは、オレが突き飛ばした殿が倒れた場所である。
   戦慣れした男達のひきつった表情が、オレの心臓を不吉な速度で鳴り響かせた。
   確認しなければ。
   意を決して振り返ったオレは、男達と同じような表情をしていただろう。
   それは、ぞっと鳥肌の立つ光景だった。
   甲冑の隙間で、奇妙なものが蠢いていた。
   黒みがかった赤い色の皮袋いっぱいに詰まった液体が、自然に蠕動している。そんな印象の、なにかが、甲冑の合わせから外へ出ようともがいている。そうして、それは、間違いなく、朱花に向かおうとしているのだ。
   動かなければ。
   逃げなければ。
   そう思うのに、からだは動かない。
   朱花に向かって伸びようとしている、触手めいた何か。
   おそらくはこの場にいる誰もが認めたくはないことだったろうが、これは、殿の変わり果てた姿だ。
   なぜこんなふうになってしまったのか。
   いつも、殿に従っていた河部さまは?
   ぐずぐずとのたうっている殿であったもの。
   いつしか、じりじりと後退していった武士たちから、オレと朱花だけが、取り残された。
   ぼそぼそと、男たちの声が聞こえてくる。
  「河部さまを喰らったのは殿だったと………」
  「めったなことを」
  「しかし、あれ、あのさまは……」
  「あれは、殿などでは」
  「では?」
  「俺たちは、あのバケモノにたばかられていたのだ」
  「し、しかしっ」
  「あれは、殿などではない。我らの殿が、あのバケモノだと、言ったところで誰が信じる?」
  「いいな。あれは、殿ではないのだ。だから、我らがしとめねばならぬ」
  「殿を殺したものを、我らの手で」
  「しかし」
  「他に何が出来る」
  「このまま帰れるか?」
  「殿を弑し奉ったと、ありもせぬ罪に問われたいか」
   最早、オレと朱花のことなど、彼らの目には入っていない。
  「朱花、逃げるぞ」
   朱花が頷いた。
   朱花の手を握りしめ、オレは杖と足とを動かした。
   武士たちの誰一人として、オレたちを止めようとはしなかった。
   しばらくして、ひとのものとは思えないような悲鳴と何かが焼けこげるすざまじい異臭が漂ってきた。
 

※ ※ ※
 

 それらは、ほんの数ヶ月前の出来事だ。
   朱花を追うものはもういない。
   あの後、男たちから遠く離れて、オレは、オレの右手を貫いていた傷痕がきれいに消えていることに気づいた。
   呆然と手を凝視していたオレに、『モウ痛クナイ』と、朱花がささやいた。
  『これ、朱花が?』
  『朱花ガ好キナヒトハダイジョーブ』
   たどたどしい言葉で語られた内容を理解するのに、時間がかかった。
   竜女の力を得るためには、なにも血肉を啜る必要などなかったのだ。
   ただ、愛すればよかった。
   そうすれば、竜女の力は、相手を守る。
   血肉は、逆に、強い効き目の薬がそうであるように、強すぎる副作用を持つ毒になる。そういうことなのだ。
   殿の変貌は、竜女の強すぎる血肉の副作用だったのだ。
   遠く生まれ育った国から離れたこの里で、オレと朱花とはやっと安らぐことができた。
   穏やかで気のいい里人たちは、こんなオレたちを快く受け入れてくれたのだ。
   村はずれの一軒家で、今日もオレは朱花を抱いて眠る。
   朱花のゆるやかな鼓動を聞きながら目を瞑る。それが、オレの就眠儀式だった。
 
おわり
     start 13:45 2002/08/28
up   14:50 2002/09/01
 
あとがき
   やっとアップ♪ これは、実は、長いお話のワンエピソードとして抱え込んでいたお話なんですね。たつみくんは、実は最初お侍さまだったのですが、二転三転してしまいました。
 この朱花というキャラは、結構長い間あたためてるキャラでして、この子を主人公で書いたこともあるのですが、収拾がつかないと挫折。主役を変えてみました。
 少しでも楽しんでいただけると嬉しいのですが。どうだろう?
 
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