夢うつつとろり――と、雲が渦を巻いた。 雲間から、ほんのかすかに、月の光がこぼれる、夜。 とたとたとた。 軽い足音が、畳の上を走り去る。 ―――ああ、鳥だ。 寝返りを打ちながら、そう思った。 足元には、黒猫の気配。 そっと、足の先で、和毛(にこげ)を撫でる。 黒猫は熟睡している。 静まり返った部屋の中、再び、駆け抜けた。 小鳥の気配。 しかし、小鳥たちは、篭の中。 これは、いったいなんの音だろう。なんの気配なのだろう。 思ったとたん、背中を舐め上げたのは、恐怖。 得体の知れないものが部屋にいる。 しかし、それは、すぐさまおさまる。 なぜなら、猫の中でも一番霊感が強いという黒猫が、足元で熟睡しているのだ。 少なくとも、これは、そういったものではない。 ただの家鳴りだろう。 そう思ったときだった。 ケラケラケラ――――― 砕いたガラスのかけらのような、そんな澄んだ笑い声が、耳元で聞こえた。 閉じていたまぶたを開いた私が見たものは―――― 白く輝く、十センチほどのなにか――だった。 畳の上で、いくつもの、白というよりも銀色の何かが、動いている。 軽やかに、楽しげに。 丸いなにかが動くたびに、軽くとたとたと音が鳴る。 覚えのあるような、銀の光。 なんだったろう――― 夢うつつに、手を伸ばして、触れた光の冷たさに、目が冴えた。 途端、しゃらんと鈴を振るような音がして、銀の光が一斉に飛び上がった。 一塊になった銀の光。 きらきらと流れ落ちる、銀色の粒子。 あまりのまぶしさに顔を背け、再び畳の上に視線を移した。 しかし、そこには、もはや、何もない。 ただ、かすかに開いた障子の合わせ目から、かすかに、白々とした月光が差すばかり。 ケラケラと、名残のような、笑い声が、聞こえたような気がした。
おわり
あとがき |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||